その指に触れられたい。そう願い女は濡れ光る。

想い人に光を放つ山女達が住まう隠れ里の物語。

激しい女達の劣情は、繊細で、傷つきやすく、それでいて大胆で、したたか。

狂おしいほどの思慕を募らせる女の一途さと狂気を見事な筆致で描いた傑作です。

巧みな描写は読み手の視覚と触覚を否応なしに刺激し、揺さぶり、昂ぶらせる。

まるで体の芯を掻き毟るような、それでも核心に届かないようなもどかしさ。

活字から伝わる柔らかな指で神経をゆっくりと愛撫するような感覚に、読み手も身悶えすることでしょう。

燃えるように官能的でありながら、冷静で残酷。
生娘のように初心でいて、狂女のごとく穢れている。

人間が内包する相反する二つテーマを男女の営みをモチーフに鋭く切り取った作品に思わず溜息が漏れました。

凄いです。

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