生魑 -いきすだま-

作者 夢見里 龍

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★★★ Excellent!!!

生きた人の強い情念により引き起こされる現象——生魑。

生魑の巻き起す怪異を、生魑を引き起こすに至った縺れた因果の糸を、鮮やかな羽織を纏い朱の筆を用いて正すは審神者・津雲。しばし彼の道程にお付き合いいただければ、きっとあなたも虜になるはず。圧倒的な筆力によって紡がれる、おぞましくも美しい生魑を巡る物語に——。

★★★ Excellent!!!

うまくレビューがかけないですが
この作品の1番の魅力はやはり「底の暗い怖さ」でしょうか。
何よりも、生きた人間のが引き起こす悲しさがあり、その悲しい情動が「生魑」となって怪異を引き起こす。

誰もが持っている情動を丹念に描きあげて、そこに命を吹き込んだ傑作。
あなたもこの底が知れない怖さと美しさに魅了されてみては?

★★★ Excellent!!!

この作品は、基本的には短い噺が集められたような体裁を取っている。それが恐らくは読者をして手に取らしめ易い要素になっているのであろう。言わばつまみ読みが可能なのである。
かく言う私も、初めはちょっと覗いてみるかといった具合でしかなかった。

ところがどうだ。
生魎なるもの、そして引き起こされる怪異の恐ろしさたるや。
単なる怪談、妖怪噺の類ではなく、それを行うのは生身の人。人の業の為せる歪みは、それを埋めよ埋めよと呻き鳴くが如く、人を求める。

怪異ではなく、これは人の狂気。そう私は貪るように幾つかの噺を手に取り、感じた。

そしてそれは漆黒に塗り潰されたものではなく、いつも昏く、ときに玻璃のように濁り透け、玉蟲のように様々な色を帯びる。

流れる血さえも柘榴の珠の如く美しい。
読むうち、本来、人が恐れ、忌避すべきはずのものに、腕を伸ばし指を入れ手繰り寄せたいような衝動に駆られるのだ。

どこまでも美しき言葉でもって、縦横に織られる物語。華美な修辞は単なる装飾ではなく、ときに波濤のように、ときに白露のように律動を産む。それは物語自体の脈動となり、いつしか読み手は己の中に何物かの胎動を感じるに至る。

それがどのような文様を描くものか、この先も双つの眸に焼いて付けたいと思う。

——もしかすると、これは、どうやら、私も生魎に魅せられたか。

★★★ Excellent!!!

この作品の中で、四つのお噺を読ませて頂きました。そのどれもが、現代の人々もきっと直面する憧憬、願望、情愛、苦難を、リアルに描いている。怪異として現れる最初の現象が、徐々に現実に落とし込まれていく錯覚に陥りました。やはりその中で描かれるのは、ヒトの浅ましさと、相反する美しさ。どの物語でも、現象の根底にあるのは純粋な思い、それを突きつけられる気分でした。
どのお噺も、素晴らしい読後感です。読み終わる度に、色んな感情を揺さぶられます。

★★★ Excellent!!!

人と人とが関わるとき、眼には見えぬ糸が交わる。
交わりし糸を伝い、想いが伝わる。
強すぎる想いはやがて思わぬ障りをもたらし――

日常の中の非日常。強き想いの生魑。向けられ晒され、あり得ぬ奇妙な出来事に、悩み苦しむ人々に対処せしは筆使い。

ふらりと事件に関わって、糸を解したその後は――

人当たりの良い見た目でありながら、決してやさしくはない審神者の津雲が辿り着いた先には庵を構えた医師の朧。津雲は『友』と称した男に自らの一族に着いての秘された情報を読み解くように依頼する。

やがて見えて来る一族に関する秘密。秘密を知られることに不都合があるモノたちによる刺客が送られ――

人の強い気想いがもたらす業と紐解かれる津雲の秘密。

二筋の物語が進む先、何が起きるかとくと見よ。

決して懐き切らぬ猫のような津雲に振り回される苦労人の朧を見るにつけ、頑張れ朧先生と応援したくなる一幕も。

是非ご一読を。

★★★ Excellent!!!

怪異を描くということは人間を描くということに他ならない。怪異を読み解くということは人間の情念を読み解くということに他ならない。本作を拝読させていただいて、あらためてそんなことを考えさせられた。江戸の空気を感じさせてくれる文体も秀逸。渾身の一作である。

できれば救ってやりたかった。そう思わされたということは、感情移入できる人物像を描くことに成功しているということだろう。