或る一族の末裔の物語。強いて言えば、漫画の蟲師に世界観が似ている。

短編を連ねた構成で、ロードムービー的に展開します。中盤に差し掛かった時点で主人公が自ら旅立ちを口にしますが、そこからは旅先モードに移ります。その目的地は、ネタバレ回避のため伏せますが、本作品の主題でもあります。
でも、これはネタバレにならないかな。その目的地は作者と関係する場所だそうです。ちょっと脱線しますが、本作品は作者の郷土愛の賜物でもあるんですね。

レビューに戻りましょう。
一般的にロードムービーは、若い主人公が色々な経験を積んで大人になっていくのだけれど、本作品の場合、確かに主人公は若いんだけれど、従来の其れとは違う趣きです。私みたいに老境に片足を突っ込んだ者には親近感を抱く者が多いでしょう。

さて、審神司(サニワ)とは作者の造語みたいです。
生魑(イキスダマ)の設定も一風変わっている。意図して呪ったのではなく、無意識なる感情が第三者に害を成す。それを解消するには被害者側から潜在的加害者に遡ればならない。その過程は丸で一種の推理小説なんですね。
それを各々の短編ごとに楽しめる。しかも、色んなバリエーションを提示することで、人間の業を浮き彫りにする。そして、最終幕に突入するわけです。計算され尽くした巧い構成だと思いました。
キャラも光ってます。

読んでも「時間の無駄だった」とか後悔しない、と思います。

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