第4章 新たな展開

第86話 大鬼

 俺の名はレッド。

 冬になりピンクが出産した。

 巣穴で生まれた子供達は五匹。

 オスが四匹とメスが一匹だ。

 生れた時に子供はぼやけた暗い色の毛皮で覆われ、耳も聞こえず眼も開いていない。

 二週間を過ぎると見えるようになり、3週過ぎると耳も聞こえるようになる。

 この時から子供達は非常に行動的になり遊び始める。


 子供は六週で離乳し、親は彼らに肉を運ぶようになる。

 エサを捕獲するとその場で肉を食べ、呑みこんだ肉を巣穴に帰って吐き戻し子どもに与える。

 お腹を空かせた子供達は大人の口吻に飛びつき、その鼻への刺激で大人が吐き戻した肉を食べる。

 そして三歳を過ぎる頃には子供たちは親を離れ、自分の連れ合いを探す旅に出る。

 それまでは家族で仲良くやって行こう。



 春にはブルーとイエローも連れ合いを探す旅に出ると言う。

 これでシルバーの兄貴との約束通り群れを作れる。


 ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 ポポンが我が家に来てから私は毎日が寝不足。

 夜中の三時くらいになると『ミャ~』と騒ぎ出し家の中を飛び回る。

 私は夜明けと共に起きるので、後一時間くらい遅ければいいのだけれど。


 あれから大工さんに頼んで猫タワーを作ってもらった。

 昼間はそこで寝て眩しいのか手で顔を隠して寝て居る。

 起きたかと思うと窓の外を眺めていたり…。


 シルバーと散歩に出かける時もついて来たがる。

 でも私達の速度には追い付けないので、リュックタイプのキャリーバッグをネットスーパー『SAY YOU』で購入した。

 その中に入れポポンの顔が見たいので、背負わずにリュックを前にしている。

 とは言っても私もシルバーの背に乗っているのだけれど。


 シルバーが運動兼魔物狩りをしている間に私は薬草を採取している。

 薬草も色々あって回復薬になるものや、魔力回復、解毒剤になるものもある。

 その私の周りをポポンはクルクルと纏わりついて遊んでいる。

 可愛いものね。


 遊び疲れると私の肩に登ってくる。

 ポポンは多分生後二か月くらいで600gもないから軽いものね。

『ミャ~』

 そして天下を取ったように鳴くのが可愛い。


 そんな時だった。

 ガサ、ガサ、ガサ、

  ガサ、ガサ、ガサ、

 林をかき分け何かが近づいて来た。

「シルバー?」

 私は思わずそう叫ぶ。


 すると合わられたのは大鬼オーガだった。

 なぜこんなところに。

 私はポポンを胸に抱き逃げる。


『シルバー、助けて!!大鬼オーガ追われてるの』

 いつの間にかシルバーとは思念伝達が出来るようになっていた。

 会話なしで自分の思いを念にして相手に送ることができる。

 離れることがあるとは思わなかったから、今まで使う機会がなかったけれど。


あねさん、いま匂いを追ってます。お待ちください』

『待っているわ、シルバー』

 その間も私は大鬼オーガに追われ続ける。


 森の奥に進むと遺跡の様な建物があった。

 丁度、逃げ込めるわ。

 そう思った私はポポンを連れ中に飛び込む。


 すると突然、門が締まり無機質な声が響く。


『ようこそ、実力主義の迷宮へ』


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