第5話 仲間

 シベリアン・ハスキーの様な大型犬が5匹。

 私の目の前で何やらワン、ワン鳴いている。


 私も困ってしまってワン、ワン、ワワ~ン、て犬のおまわりさんか?!

 お後がよろしいようで…。



 あら?

 そう言えばこの子達、首輪をしていないわ。

 可哀そうに。

 こんなに体の大きいワンコ達5匹を飼い主さんが、養うことが出来なくて捨てられたのかしら?

『その一目ぼれ迷惑です!!』

 飼う買う前に考えよう!!

 なんてね。

 ゲッフン、ゲッフン。

 一人芝居もそろそろ疲れて来たわ。



 あれ?ワンコ達はお腹が空いているのかしら?

 仕方がないわね。


 そう思いながら私はアイコンをタップし、『ネットスーパー』を立ち上げる。

 確かペット用品も売っていたわね。

 え~と、ドッグフードと…。

 そう思いながらサイトの中を捜す。

 あった!!

『愛犬元気ん』

 ん?

 元気ん現金

 どこまでネタ縛りなのかしら?

 そう思いながらも私は2.2kgの餌と、犬用の餌を入れる食器を5個購入した。


 カラ、カラ、カラ、

「さあ、食べてね。私からのプレゼントよ」

 購入したドライフードをお皿に入れ、ワンコ達の前に置く。


 ワンコ部下A『お~、何か美味しそうな匂いがする』

 ワンコ部下B『本当だ、これは肉の匂いか?』

 ワンコ部下C『食べても良いて、ことかな?』

 ワンコ部下D『きっと、そうだろう』

 銀色のワンコ『据え膳食わぬは男の恥と言うからな。仕方ない。ここは頂こう』

 例えが違いますよ~!!

 私はワンコ達の会話を、アフレコをしながら突っ込む。

 まあ実際はワンコ達がワン、ワン、ガルルと鳴いているだけなんだけど。


 そして意を決したように、銀色のボスワンコが食べ始める。

 するとボスワンコが、むさぼるように食べ始める。

『お~、旨い。うまいぞ~』

 ワンコ部下A『本当ですか兄貴?!』

 ボスワンコ『あぁ、嘘を言ってどうする。お前達も食べてみろ』

 ワンコ部下B『へい、おっ!!これは、なんという旨さなんだ』

 ワンコ部下C『こ、これは…。ビーフとチキンのバランスが絶妙だ』

 ワンコ部下D『緑黄色野菜や小魚も入ってるぞ!!おいしさと栄養バランスを考えた食事だ!!』

  ワン、ワン、ワン、ワン、ガルル、ワン、ワン、ワン、

  ワン、ワン、ガルル、ワン、ワン、ワン、ワン、ワン、

   ワン、ワン、ワン、ワン、ワン、ガルル、ワン、ワン、

 私にはそう言っているかのように聞こえた。


 さて、そろそろ現実逃避は止めて、これからどうするのか考えないと。

 陽は沈み始め辺りは暗くなっている。


「じゃあ、私は行くから。みんな元気でね」

 そう私は言いながら手を振り、その場を立ち去ろうと歩き出す。

 するとワンコ達も私の後を着いてくる。

 しまった。

 餌をあげたから懐かれてしまった。

 飼えないなら、情けをかけてはいけなかったのね。


「ごめんね。着いて来ても貴方達を飼う事はできないわ。私もこの世界に来てまだ、定職にも付いて居ないしね」

 ボスワンコ『ワン、ワンそんな、姉さんワン、ワワ~ンどこまでも着いて行きますぜ

 ワンコ部下A『ワン、ワン、ガルル、ワンそうです、姉さん、どこまでも一緒です

「お前達~!!」

 ボスワンコ、ワンコ部下A~D『ワン、ワォ~ン姉さん!!』


「わかったわ。お前たちに出会えたのも何かの縁だわ。これからよろしくね」

 そう言いながら私は、ワンコ達を抱きしめた。

 ガブッ、ゴリゴリ、ガブッ、

 

 まあ、本当に赤ちゃんなのね。

 でもさすがに5匹同時に手足を甘噛みされるとね。

 あっ!頭を噛むのはやめて。

 髪の毛が唾液でベタベタになるから。

 


 さあ、行くわよ。

 そう涼香すずかは言いながら、新しい仲間5匹と歩き出すのであった。


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