第10話 食べたいのは?

 ガツ、ガツ、ガツ、ガツ、

  ガツ、ガツ、ガツ、ガツ、


「旨い。これは旨い!!」

 そう言いながら冒険者のジョヴァンニさんが、『ワンチュール』をかけたドッグフードを食べている。

 ごほ、ごほ、ごほ、

 しばらくするとむせ始めた。


 まあドライフードを、あんな勢いで食べればなるでしょうね。

 どうやら水の持ち合わせも無いみたいだわ。

 仕方がないわね。

 そう思いながら私はネットスーパーで天然水を購入して、ジョヴァンニさんに『サービスだから』と手渡した。

 あぁ、どんどん手持ちのお金が無くなっていく…。


「あ~、この水も旨いね。こんなに貴重な水をありがとう」

 ジョヴァンニさんに、そうお礼を言われた。

 私が不思議そうな顔をしていると、商人のヤルコビッチさんが私に教えてくれた。

 水は貴重で井戸や川で汲まないかぎり手に入らない。

 ましてこんな野営中なら、水分補給はできないそうだ。

 水道が無いと言うことか…。


 中世ヨーロッパの時代は、綺麗な水を手に入れることが困難だったと聞くわ。

 井戸は掘削機も無い手掘りだから、経済的に豊かな領主などに限られていたそうだけど。

 その時代と同じと言う訳か。



「あの~スズカさん」

 声をした方向に見ると、冒険者のイングヴェさんだった。

「犬族用の食事があるなら、猫族用のはありますか?」

 はい?

 そう言うイングヴェさんの帽子を取った頭を見ると、ここにも可愛い耳がチョコンと2つ。

 あぁ、猫族なのかしら?


「あ、はい、あります」

 なんだかもう、どうでもよくなった。

「では私にも猫族用の食事をお願いします。500円でいいでしょうか?」

 あ、そうですか…。

 私は自棄やけになり大きな声で叫ぶ!!


「はい、猫ちゃんセット入りました~!!」


 そう言いながらネットスーパーで猫用の餌と、『ニャンチュール』を購入した。

 それをイングヴェさんのお皿に入れ、かき回せば出来上がり!!


「「へい、ニャンコスペシャル(猫の餌)お待ち~!!」」


「わぉっ!美味しそうな匂いだ」

 イングヴェさんが嬉しそうに食べ始める。


 ガツ、ガツ、ガツ、ガツ、

  ガツ、ガツ、ガツ、ガツ、


「旨い、旨い~」

 ごほ、ごほ、ごほ、

 はい、お水です。どうぞ。


 さて。私も食べようかな~!

 前に買っておいた『6枚切り食パン』の残りをストレージからだす。

 そしてネットスーパーで牛乳を購入する。

 パンと言えば牛乳だよね。


 ジ~~~~~~~~。

   ジ~~~~~~~~。

     ジ~~~~~~~~。


 どこかで虫が鳴いているのか?

 そう思ってふと見るとヤルコビッチさん、冒険者のゲオルギーさんとアレクサンデルさんの3人がこちらをジ~と見ている。

 どうしたのだろう?

 そこでふと思った。

 そう言えば私の外見はどうなっているのかしら?

 この世界に来てから体が若干、小さくなっているから若返っているのだと思うけど。鏡を見ていないから分からない。


 ま、まさか?!

 若い女の子がこんなところで男5人と、一夜を明かすこと自体おかしい。

 まして17歳のピチ、ピチになった私なら…。

 転移していきなり、こんなところで…。

 あぁ、もう駄目…。


 すると意を決したようにヤルコビッチさんが口を開く。


「スズカさんが食べているものはパンでしょうか?随分と柔らかそうですが?」

 な、なんだ。食べたいのは私ではなくパンだったのね。

 でも普通パンは柔らかいと思うけど。


「えぇ、パンです。パンは柔らかいものだと思いますけど…」

「それは違います」

 すると焚火の灯りにヤルコビッチさん達が、手に持っているパンが照らされる。

 あれ?黒いんですけど。


「スズカさんは良い暮らしをされてきたのですね。我々庶民が一般的に食べているのは、小麦ではなくライ麦から作られた硬い黒いこのパンなのです。小麦で作ったパンは高く庶民の口には中々入りません」

「そうなのですか。知らなくて…」

「いえ、別に責めている訳ではありませんので」

「はい、確かにこれはパンですけど」

「もし、手持ちに余裕があれば分けて頂けないでしょうか?」

「いいですよ」

 残りの枚数は3枚なので数が足りないわ。


 私はネットスーパーで再度、『6枚切り食パン』を購入した。

「はい、まずは1枚ずつどうぞ」

 そう言いながら、3人に1枚ずつ手渡す。

 でもそれだと以前買っておいた、イチゴジャムだけでは足りないかも?

 ジャムを見たら値段は200~600円だから、新たに買ってもいいか。

 ええい、どうとでもなれ!!

「ジャムはイチゴですが、ご希望ならハチミツ、ブルーベリーもありますよ」


「な、なんと?!」

「ジャムがあるのか?」

「ハチミツだと~!!」


 3人が口々に驚いている。

 いったいどうしたの?

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