第55話 青空クッキング

「うっ!!足が…」

 突然、ダニロ侯爵が苦しみだす…。

「おとう様~~!!」

 テレザお嬢様の悲痛な叫びが大きく響いた。


 どうしたのかしら突然?

 足がつったとかいう、まさかのネタ落ちではないよね?

「足のむくみが…、痛みが引いていくようだ」

「おとう様~、それは本当?良かった~(泣)!!」

 テレザお嬢様がダニロ侯爵に抱きつき泣いている。

 良い親子の場面だ、違うわっ!!

 そんなに早く効果が出るとは思えない。

 病は気から、的なことかしら?


「本当か?ダニロ」

「えぇ、本当です、父さん。まだ違和感はありますが、今までの痛みが嘘の様です」

「それは良かった、とても信じられん。あの不治の病がこうも簡単に治る兆しを見せるとは」

「スズカお姉ちゃん、ありがとう。これもお姉ちゃんのおかげよ」

「それはよかったわ。後はこのまま食事療法を続けることね」

 さて、そろそろ私はお暇しようかな?

 そう思った時だった。

 グルルルル~!!

 私のお腹が鳴った。

 恥ずかしい!!


「おやおや、スズカさんはお腹が空いたようですな」

「失礼いたしました、ワイアット公爵」

「いやいや、スズカさんの年頃なら食べ盛りです。お腹が空くの当然です」

 この世界では1日2食が普通だ。

 しかし1日3食に慣れた私は、昼頃になればお腹が空く。

 腕時計を見ると時刻は丁度12時。

 朝、5時くらいから起きていることを考えるとお腹は自然と空きます。

 逆に他の人は空かないのか疑問に思うくらいだ。


「では我が家で昼食の用意をしよう。しかし普段は食べないので、食材の準備を入れると出来上がるまでに2~3時間はかかるかもしれんな」

 この世界は冷蔵庫がない。

 そのため野菜以外の食材はその都度、市場から必要な分だけ購入をしているらしい。

 突然、お昼が食べたい!!となっても食材が揃わないと言うことね。

 コンロもないから火の調整も難しく、弱火や強火も出来ないときている。

 それでは調理にも時間が掛かるはずよね。


 コンロ?

 そうだ、ネットスーパー『SAY YOU』でコンロが買えるじゃない。

 それにここには解体をしている騎士の人もいる。

 私が作ればいいんだ。

 私はさっそくカセットコンロを2台購入した。

 1台なんと2,677円、安くなったものね。


「ワイアット公爵、解体している人達も大変でしょうから、休憩を兼ねて私が皆さん昼食を作りたいと思います」

「ほう、スズカさんに作って頂けると。しかし食材が間に合わんぞ」

「大丈夫です。私の方で用意いたします」

 そう言うと私はまずネットスーパーで小型のテーブルを購入した。


 次は大鍋とコンロ、そして牛肉の薄切りとタマネギ、ジャガイモ、マッシュルームとシチューのルーね。

「スズカさん、これは…」

 ワイアット公爵が驚いた顔をしている。

「これは驚いた。魔道コンロは品数がなく値段も高価で貴族でも中々、手に入らないと言うのに。スズカさん、君はそれをどこで…」

「友人の知り合いから、もう使わないからと譲って頂きまして、あはは!!」

 そう言って私はごまかした。


 さあ、青空クッキングの始まりよ!!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 読んで頂いてありがとうございます。

 あっという間の1年でした。


 また来年もどうぞよろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る