第96話 真祖オルソ

 私達はダンジョン攻略を目指して進んでいる。

 あれからどのくらい経ったのだろう。

 ここが何層なのかすら、もうわからない。


 このダンジョンは階層によっては天候がまちまちで夜や昼もある。

 曜日の感覚が無くなり魔物がいつ襲ってくるのかわらない。

 警戒心で夜も眠れなくなり自律神経が乱れていく…。


 いつ使う機会があるのかと思うくらい、ドロップアイテムはたくさん貯まったけれど。

 早くここを出たい…。

 本当に終わりがあるのかと思うくらいだった。



 ダン!!

 何度目だろう。

 ボス部屋のドアを開けるのは…。


「ようこそいらっしゃいました。お待ちしておりました」

 そこには大きなマントで身を包んだ大柄の男が居た。

 男は耳まで裂けた口に顎下まで伸びる二本の犬歯、真紅の瞳、枯れ木のような手足の先には数十センチはある鋭い爪が伸びている。


「この階層を任された吸血鬼の真祖オルソがお相手致します」

 そう言うと魔物は飛びかかって来た。


「シルバー!!」

『へい、あねさん』

 シルバーが魔物に飛びかかる。

 魔物の鋭い爪の攻撃を受けてもシルバーの鋼の様な毛皮は傷一つ付かない。


 私はスロウの薬を魔物に投げつける。

 動きが遅くなった魔物にシルバーが腕に噛みつく。

 だが魔物は噛みついても傷がすぐに再生してしまう。


 これでは決着がつかない。

 すると魔物が私に向って飛んでくる。


 しまった、直接戦うなんて私には無理よ…。

あねさん!!』

 シルバーの叫び声が聞こえる。


 魔物は鍵爪を振り上げ私に向ってくる。

 駄目、もう間に合わない。

 この世界に転移して短かったけど楽しかったわ…。

 私は思わず腕をかざした。


〈〈〈〈〈 ガンッ!! 〉〉〉〉〉


 私の腕は振り下ろされた鍵爪を受け詰めている。


 何?これは…。


「なんだ、この女は。私の攻撃を防ぐとは、ごほっ」

『ガウォ~!!』

 シルバーに攻撃され吹き飛んでいく。


「ちっ、くらえ。Dark Arrowダークアロー


 漆黒の矢を模った魔力の塊が飛んでくる。

 シルバーは器用に避け風魔法を放つ。


『ウインドインパルス!!』


 ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!

   ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!

  ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!


 魔法の連打で魔物の腕が吹き飛ぶ!!

 しかしそれも時間が経つと再生していく…。


 このままでは駄目だわ。

 なにか対策を考えないと。


 そんな時だった。


ミィ~、ミィ~、ミャォ~ンみんなを、いじめるの、だめ!!』

 ポポンの声が響き魔物に向って行った。


 ポポン、やめなさい!!

 貴方では無理よ。


 だけどもう遅かった。

 ポポンは魔物に向かって行く。

「なんだこの白い猫は!!」

 そう言うとオルソはポポンに鍵爪を振り下ろした。


『キャウ~ン!!』

 ポポンが泣き声をあげ宙に舞う。



 ポポンッ?!

 その瞬間、スズカの中で何かが壊れた。


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