第47話 称号

「ほらシルバー、甘えるのはもうやめなさい!!」

 そう言うとシルバーはシュンとして私を噛むのを止めた。

「もう~、この子は甘えん坊なので…」

 いや、違う。絶対に違うと、それを見ていた騎士達は思った。


「しかしワイバーンをこのままにしておくわけにはいかぬ。どうすれば良いのか」

 ワイアット公爵が困った顔で呟く。

 それはそうね。

 こんな全長3mはありそうな魔物が2匹、道のわきに倒れていたら通れないわ。


「それなら私がお預かり致しましょうか?」

「なに?君がかね」

「そうです」

 そう言うと私はポーチを叩いて見せる。

「ほう、マジック・バッグ持ちなのか。しかしこんな巨大な魔物を2匹も収納できるのかね?」

「え、えぇ、ギリギリですが収納できそうです。ですが条件があります」

「どんなことかね?」

「私は夕方から店を開けるので、みなさんに合わせて戻ることはできません」

「ではどうすると言うのだね」

「私は先に帰るので一度、お預かりをして指定された場所に、後日お持ちしたいと思います」


 シルバーなら私を乗せて時速30kmくらいで走れるので、1時間あれば王都までたどり着く。

 でも馬車なら早くて時速4kmくらいだと考えると7~8時間は掛かるだろう。

 そうなれば暗くなった道をそのまま馬車で行くより、今夜は野営をする可能性が出てくる。


「ワイバーンを倒したのがそなたの使役しえきしている魔物なら、ワイバーンはあなたの物だ。スズカさんとやら」

「いいのですか?!食費が助かります」

「おい、おい、まさか食べると言うのかい?」

「えぇ、シルバーの食事になるので」

「で、ではお願いがあるのだが」

「なんでしょうか?」


「ワイバーンの素材を売ってほしいのだ。ワイバーンの鱗や皮や肉、血はとても貴重な物で滅多に市場に出回らないものだ」

「それ程のものなのでしょうか?」

「あぁ、そうだ。しかも空中に居る魔物を倒すのは難しいからね。それに君への報酬も受け取ってもらわないと困るから」

「え、いえ、ワイバーンの素材を頂けるだけで十分です」

「そう言う訳にはいかないのだよ。貴族には面子があるからね。それに君達はもう|ドラゴンバスター竜を退治する者だからね」

「ドラゴンバスターですか?!そんな大層な名前は要りません。それにワイバーンは竜ではないと思いますけど…」


「まあ、そうだがな。本当のドラゴンなら街など一瞬に消える。ワイバーンでもそのままにしておけば、街や村に被害が出ていたかもしれないからね。それだけでも十分に脅威なのだよ」

「では報酬は頂きますが称号は辞退いたします。それでどうでしょうか?」

「欲が無いのだね。ワイバーンの素材が出回った時点で、探りを入れてくる者が多くなるはずだ。だが我が公爵家が間に入ればそれも出来ないだろう」

「それでお願いします!!」


「では明日の昼頃に屋敷に来てもらおうか。いいかね?」

 お店も休憩の時間だから丁度いいわ。

「わかりました、伺います。行くわよシルバー」

「あぁ、ワンちゃんが…」

 テレザお嬢様が名残惜しそうな顔をしている。

 仕方がないな。


「シルバー、遊んでもらいなさい」

『え~、遊んであげなさいの間違いだろう~』

「テレザお嬢様、シルバーがあなたと遊びたいそうですよ」

「まあ、本当!!嬉しい。おいで~シルバー」


 モフ、モフ、ワサ、ワサ、モフ、モフ、ワサ、ワサ、

  モフ、モフ、ワサ、ワサ、モフ、モフ、ワサ、ワサ、

 モフ、モフ、ワサ、ワサ、モフ、モフ、ワサ、ワサ、

  モフ、モフ、ワサ、ワサ、モフ、モフ、ワサ、ワサ、

 シルバーは寝ころびながら仰向けになりモフ、モフされている。


 ひとしきりシルバーを堪能したテレザお嬢様は満足したようだった。

 その間に公爵の屋敷の場所を聞き私達はその場を離れる。

「ではまた明日伺います。テレザお嬢様、バイバイ~」

「バイバイ、スズカお姉ちゃん」


 そう言うと私はシルバー背に乗りお約束の言葉を叫ぶ。

Hi-yo Silverハイヨー シルバー

 ヒヒ~~~ン!!

 シルバーは後ろ2本足で立ち上がりいななき、私達は王都を目指して走り出す。




 テレザは初めて大型の魔物を見て思った。

 ワンちゃんて、ヒヒ~~~ンと泣くのね。


 違うから…。


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