第15話

 朝起きてカーテンを開けると、雨が降っていた。最近は晴れの日が続いていたから、久しぶりの雨だ。


 空はグレーに染まっている。今日はモノクロな雰囲気が続きそうだ。


 この前の休みの日になんとなく近くのモールに出かけた。ふらっと立ち寄ったカメラ店を出たところで、果帆かほたちとばったり遭遇した。


 あれは本当に驚いた。果帆かほは友達を連れていて(確か田中たなかさんと言っていた)、なぜか三人でお茶することになった。


 アタシは田中たなかさんのことを苦手に感じていた。ぐいぐい質問するし、距離感が分からない。果帆かほとは全然違う。


 幸い、田中たなかさんはアタシと同じ漫画が好きだったから、そこで意気投合することができた。でなければ、アタシはずっと気まずいまま、あの時間を過ごすことになっただろう。


 巻き込んだ果帆かほは罪悪感を感じていたようだった。もしそれを少しでも解消させてあげられたのなら、アタシは田中さんと話して良かったと思う。アタシのこの性格はアタシの責任だ。アタシの生き方の結果は、自分で負わなければならない。それを他の人に負ってもらうのは違う。友達付き合いだって、もっとうまくやっていく必要がある。田中たなかさんはなんとか乗り越えたんだし、大丈夫。


 そう言い聞かせるものの、やっぱり不安や恐れは消えてくれない。小学校の経験はそう簡単には償えそうにない。


 問題はアタシと同じ高校に「彼女」がいることだった。果帆かほ田中たなかさんはアタシを受け入れてくれた。でも、「彼女」はおそらくそうではない。


 春に全校集会でその名前を聞いたとき、さあっと血の気が引いていくのを感じた。


 アタシにとって「彼女」は、触れたくない罪だった。幸い今まで面と向かって出会うことはなく過ごしてきた。でもこれからもそうとは限らない。


 遠目で「彼女」を覗くと、昔の「彼女」はどこにもなく、別人がいるだけなのだ。


 その別人に「彼女」がなった原因は、おそらくアタシだ。


 アタシのしたことが、今の「彼女」を作り上げた。


 やはり、自己責任だと思う。けれど、今更どう悔やんでも嘆いても、昔のアタシがしたことは消せないのだった。


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