第6話
今日の昼休みはおかしなことがあった。
アタシに、話しかけてきた人がいた。
彼女は雨が降る中わざわざ外に出てきて、アタシに声をかけた。
変なの。
いかにも近づいたらヤバそうな人だと思うんだけど、アタシ。
あえてそうやって、人との距離を取ってるのに。そんな努力を軽々と水の泡にしたのは、彼女くらいだ。
自分から近づいてきた割に
動揺して普通だ。でも、それでも彼女は逃げなかった。このアタシと、向き合おうとしていた。それがちょっと嬉しかったから、今日は慣れない、同級生との会話というものをやってみた。
先生以外の人と会話するのは、やはり違和感を感じる。
理由はなんとなく理解している。相手が感じる印象を意識してしまうからだ。この人はアタシが苦手だなとか、あの人はアタシを嫌ってるなとか。たまに仲良くしようとする人もいるけれど、だいたいはいずれ去っていく。アタシに失望するか、アタシが失望させるか。
六割くらいは失望させている気がする。ヒドイヤツだなと、
そうやって縮こまっているうちに、私のまわりに他人はいなくなった。こうなったら、あとは自由だ。
さて。
ぼんやり考えながら、チョークで汚れた黒板を掃除する。
放課後の教室はもうみんな出払って、残っているのは日直のアタシだけだ。朝から降り続けている雨が黒板を湿らせ、教室にも古い木のにおいが
最初にこの教室に
緑というより白っぽくなった黒板を一通り掃除して、黒板の下の落ちたチョークを掃く。黄色や赤、青の粉に、砕けて原型を留めないチョークの
軽く舌打ちをしてしまった。誰もいないし、聞かれてはいないだろう。まだ抵抗するチョークの粉を掃きとるために、何か濡れた布が要る。雑巾でも使うか。
雑巾を濡らしに教室の扉を開け、廊下に出た。
と、誰かが急に立ち止まる音がする。
「アッ」
「あっ……」
左に鞄をさげ、アタシを見ている。というか向けてしまった視線を外せないって感じか。不意打ちを食らったみたいに固まっていて、左足が後ろに少し後ずさったままだ。
「あっ……あ、どうも」
ひどく
「あー、
「そ、そうです……。さっきはどうも……」
「掃除……ですか?」
「うん。日直だから。水濡らしに行こうと思って」
「手伝いましょうか?」
「いいよ。アタシの仕事だし」
当たり前のことを言うと、はっとした顔になり、急にしぼんでいった。
「あ、ですよね。違うクラスだし……。すみません」
くるっと背中を向けて、水場に行こうとした。すると、
「あの」
帰ったと思った
「掃除終わるまで、ここで待っててもいいですか……?」
「なんで?」
「
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