第19話

 最悪の事態になった。


「彼女」に会った。


 あんなところで鉢合わせるとは。


 想定外すぎて、頭から血の気が引いていくのが分かった。


 案の定、「彼女」はアタシを許していない。その目が、はっきりと語っていた。


 果帆かほに迷惑をかけてしまった。アタシの過去は、アタシの今も飲み込まないと満足しないらしい。アタシだけならまだしも、果帆かほを巻き込んだのが痛恨だ。


 どうしてこうなってしまったのだろう。原因ははっきりしている。あの時、アタシが、「彼女」にあんなことをしたからだ。ほんと、なんでしてしまったのだろう。悔やんでも悔やみきれない。


 さっきから果帆かほはアタシのそばにいてくれている。アタシはそんな果帆かほの優しさを、素直に受け取ることができない。


 果帆かほの純粋な心が、今のアタシには耐えがたい。「彼女」との話は、まだ話せそうにない。あまりにも深く、重くて、つらいものだから。


 どうしてアタシは、こうなんだろう。


 また自己嫌悪の渦に飲まれそうだ。そばにいてくれる人がいるというのに、アタシは溺れそうになっている。


「大丈夫?」


 また優しい声が聞こえた。それを受け入れてしまったら、今のアタシは崩壊してしまうだろう。崩れないように歯を食いしばって、耐えるしかない。


 だから、たとえそれが唯一の光だと分かっていても、受け入れることはできない。


 もし、もし仮にアタシが果帆かほに過去を話すとしたら。


 それは、アタシが過去から自力で這い上がった時だろう。


 そんな強さは今はない。これから持つ保証もない。


 とにかく、横になり目をつむる。そして、全てから耐える。


 それしかできそうになかった。

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