第16話
「おはよう」
「おはよう」
もう昼だけど、初めてのあいさつだからそう返事する。
「……欲しいの?」
そんなアタシの視線を見てか、
「いや……」
「あげるよ?」
そう言って、卵焼きを箸でつまんでみせる。
「え、えーと……」
これは、その、もらっていいのだろうか?
そんな想像をしてしまう。今のアタシの顔はどうなっているのだろう。混乱となぜか恥ずかしさが合わさって、自分でもよく分からない。
「じゃ、じゃあ、もらおうかな」
そして、いつの間にか右手を差し出していた。
え? そうなるの?
アタシの変な妄想は実現せずに終わった。安心していいはずなのにどこか不満が残った。よくよく考えてみると、ちょっと期待していたところがあったのかもしれない。何を? 分からない。
「どう?」
そんなアタシの困惑をよそに、
「うん。おいしい」
率直な感想を伝えると、
「よかった」
整った顔に微笑みが浮かぶ。やっぱり笑顔が素敵な子だな、と感じる。
「あ、そういえば」
「この前の休みに
「
「あ、そういや言ってなかったね。
あの
アタシが他の人とそういう盛り上がりを経験するのは初めてだったから、今でも自分のことだという実感が薄い。
「
「うん」
かわいらしい名前だなと思った。
「
「そうなんだ」
どうして
「同じ漫画が好きとは知らなかった」
「
まあ喫茶店ではギクシャクしてたしなあ。その後打ち解けることができたから、
「
「別に良いよ。明るい子だね」
「実は、最初はちょっと苦手だった」
「……だよね」
「けど、悪い子じゃない。アタシが勝手に距離を感じてただけかも。これからも、仲良く話せるような子だよ」
そう言うと、また
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