第14話
「あ、これ良いじゃん」
白のシャツに淡いブルーのアウター。ベージュのスカート。爽やかな組み合わせだ。
立ち鏡に映る自分の姿は、いつもよりちょっぴり大人びて見える。
週末に
季節は本格的な夏に差し掛かっているので、並んでいる服も半袖や薄手になっている。
「ちょっとこれ乗せてみてよ」
また
言われるまま頭に帽子を乗せる。夏コーデ完成。
「最っ高!」
品定めしているとなかなか決められず、そうこうしているうちに
「あ、ありがとう」
「あ、あれもいい!」
言われるがままいろんな服を着てみて、結局選んだのは最初に着た服だった。自分で選んだのは帽子くらい。買った服の入った紙袋が思ったより重くて、気持ちもちょっと重くなる。
また他人に任せてしまった。
「いやー、
「さすがに全部買うわけにもいかないし……」
「あたしが買ってあげても良かったんだよ?」
「いいよ……。選んでもらったわけだし」
「そっかー。まあいいや」
私は左手に持った紙袋の重さを感じながら、モールのお店に視線を泳がせる。
本屋にブティック、靴屋さん。いろいろあるんだな。
すると、左側の通りにちょっと変わったお店が見えた。
棚に何やら黒っぽいものが並んでいる。よく見るとカメラだった。
「へー、カメラ屋もあるんだ」
独り言のようにつぶやく。カメラか。
そんなことを考えていると、見慣れた姿が視界に入った。
「あ」
思わず立ち止まってしまう。ご機嫌な
カメラ店から出てきた黒い瞳。それがふらっとこちらを見て。
「あ」
黒いTシャツにワイドパンツという組み合わせだった。制服以外の
不意打ちを食らったといった様子。こちらも同じようなものだけど。
何とも言えない沈黙が、三人の間に生まれる。それを破ったのは
「何? お友達?」
「あ、うん」
「こちら
「どうも~」
耐えられないので先導を切って行動を起こす。
「じゃ、じゃあ三人でお茶しない?」
「いいねー。行こ行こ」
三人でゆっくりできそうな喫茶店を探して入った。
奥のテーブルに案内される。
「さあて、何しよっかなー」
「
「あ、そうなんだ! 良いじゃん」
「てことは、あの橋の方ってこと?」
「そうだね」
「カメラ店居たってことは、なにか写真とか撮ってるの?」
「まあ、ぼちぼち?」
黒い瞳が私を貫く。最初に会った時のような、黒さ。
一瞬たじろいでしまったけど、もうどうこうする余裕はなかった。
「あ、私これにする」
メニュー表を指さし、話題をそらす。すると
注文が運ばれてきて、テーブルに並べられる。まず
「いただきまーす」
それから
喫茶店を出ると、
私と
私の横に
顔を見ると、ちょっと寂しそうに見える。
「……ごめんね。巻き込んじゃって」
「いいよ。別に」
思い切って謝ると、
やっぱり、カメラ店の前で知らぬそぶりをするのが正解だったのかな。けれど、それは私にはできそうにない。
「大事な友達、なんでしょ?」
「うん。中学の時からの」
「そういうの、大切にね」
もしかして、昔友達と何かあったのかな。
前に学校の中庭で話した時を思い出す。あの時はそっぽを向かれてしまった。今はどうだろう。
そう考えて、この場でする話題ではないと思い直した。
「ありがとう」
伝えたかった。巻き込んだことへの謝罪もだし、何より、
「……どうも」
「ごめーん。お待たせ」
また三人で歩く。モールにはいろいろなお店があるけれど、その中には変わったお店もある。目の前に見えてきたお店もそうだ。漫画やアニメをモチーフにしたアパレルショップで、様々な作品のグッズが売られている。店先に飾られているTシャツに、
「へーこんなの売ってるんだ」
と思って見ると、予想外にも
「もしかして……」
私が問う前に、本人はすうーっと私の前を通り過ぎ、店の中に入っていく。
へー。へー!
意外。
「あ、それ好きなの?」
「うん。カッコいいから」
「だよねー! わかるー」
結局二人は同じキャラのグッズを買った。店を出てからも話は続いていた。ぐいぐい話す
最初は二人を会わせたことを失敗だとおもっていた。けれど、案外間違っていなかったな。
楽しそうに話す二人を見ながら、そんなことを考えていた。
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