爽やかな後半戦
後半戦開始。やっとレギュラーになれたのにこれじゃ足を引っ張ってるだけだ。しっかりしないと!
両手で顔をパチンと叩く。
サッカーボールを目で追う。
ザクザクと芝生を踏みしめる音に耳を澄ませながら周りを確認する。
よし。今だ。5番のマークが外れている。10番からのボールの軌道は確かに5番だ。
一気に駆け上がり、5番に行くはずだったボールをしっかり自分の足に収める。
コーチから言われた言葉。
――「いいか高藤。ディフェンダーはただ単に守るだけじゃダメなんだ。状況を確認して、いま自分がすべき行動を考えるんだ。臨機応変に。時に冷静に、時に猛者となれ。」
一気に敵のゴールへと駆け上がる。体が風をかき分けていく。ゴール付近まで来た時、敵に囲まれた。
「高藤!上!上げろ!」耳に仲間の声が聞こえた。俺はディフェンダー。ここで俺がパスすっから、シュートしてくれよストライカー!
俺は上へとボールを蹴り上げる。空中で綺麗な曲線を描いて味方へと渡る。
そしてすぐにパシュっと爽快な音がした。
ワァアと歓声があがり、電光掲示板に俺のチームに1と表示された。
残り時間はもう少ない。青空の清々しさと対象的に俺はかなり汗だくだった。
「高藤ー!ナイスアシストォ!」ハハッと笑って山越先輩がハイタッチしてきた。
残りの時間、俺は守りに守った。ディフェンダーという役割、背番号2番の役割を最後まで果たすことができたと思う。
そして0-1で俺らの勝利だ。
「お疲れさん、今日はチョーシ良かったんじゃね」
三島先輩が俺の肩を叩く。
「あざっす。先輩もカッコよかったっすよ」
「お前、集中しすぎて見てなかっただろ?最後のゴールあれ、俺がしたんだぞ」
…完全に見てなかった…
「…んんー。スゴっかったっすね!」
ムッとして複雑な顔をしながら「まあな、俺のシュートなんて誰も見ねーよな…」と呟いて去って行った。可哀想な先輩だ。
「渚〜!お疲れー!」仁奈の声がして振り向くと柚香と一緒に手を振りながら暗くなってきた空の下を二人で歩いてきている。
俺は大きく手を振り返した。
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