だから今日も

それから数週間たって緒の骨折はだいぶ良くなり、退院となった。

緒くんは「また、お見舞に来てやるから待ってろよ。」と僕に伝えて 退院した。

隣の空き部屋となった入院部屋は、綺麗に整えられ、何事もなかったように静寂としていて、むなしかった。 そして、またいつもの生活に戻った。

一人でサッカーの観戦をして、暇なときは窓の外にある小鳥の巣や公園で 遊ぶ子たちを眺めたり。平凡でつまらない毎日の中で変わったことは、緒くんが毎日お見舞いに来てくれたことだ。

「風吹入ってもいいか?」いつも来てくれる。病人の僕と話してもつまらないはずなのに。

「いいよ」と答えると、カーテンを開けて入ってくる。 学校で、どんな事をしたとか、怖い先生の話であったり、黒歴史を語り合ったこともあった。


――そんな毎日。


でも、一度も僕の病気について訪ねてきたことはない。

遠慮しているのだろうか?だけど僕にとってもそれが一番いい。

僕は、いや、僕自身も何の病気か分からないから。


そう僕が7歳になったときのこと。


『「お母さん。僕の病気はいつ治るの?いつサッカーができるようになるの?」と幼い僕は母親に聞いたことがある。

「うーん…いつかしら?でも、毎日しっかりご飯を食べて、ゆっくり 休めば、きっと治るわ。」そうして、とりつくろいの笑みをうかべた。

父は、いつも仕事に出かけていた。

父は僕には言ってくれなかったが、入院費を稼ぐためのようだった。 でも、そのせいで僕や姉と出かけたり、食事したりすることができなかった。

まだ僕が病気にかかっていなかったころには元気だった父もだんだんとやつれてきている。

ただ、姉だけは僕を普通の弟として扱ってくれる。

ずっと微笑んでいて、僕のためにたまにお見舞いに来てくれている。僕のことをどう思ってくれているのかは僕も分からないけれど。

でもある日、僕が入院している間、母や父、姉が僕を除いて医者からの説明を受けていた。

説明が終わって僕の病室に戻ったとき、母や父は泣いていた。姉はうつむいていた。

「みんなどうしたの?僕の病気は何だったの?」ただならぬ様子のみんなに僕は驚き、焦った。

「風吹は知らなくていい。」と父が言うと、3人は家に帰ってしまった。』


僕のせいで今までみんなに沢山心配をかけた。

だから、せめて緒くんには心配をかけたくない。


だって、この世で1番の初めてできた大切な親友だから。 だから僕は今日もタぐれの時、学校帰りの緒くんを待ち続ける。赤く染まった夕やけを窓から眺めながら。

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