不自然な仁奈

「渚ーまた図書室にいんのかー?」

俺の幼なじみの泉仁奈だ。男っぽいけど一応女の子だ。

「ああ。何か用?」

「一緒に帰ろー」仁奈はを脚をくんで図書室の机に座る。先生が居なくて本当に良かった。

「んー…あと五分だけ。今いいところだから。」

「なんの本読んでるの?渚が本読むとか珍しー…」

覗き込んできた本を素早く隠して閉じた。

「ほら帰るぞ」

「…マジでなんの本?少女マンガとか?…そんな趣味あったの?渚…」ニヤニヤした顔で俺を覗き込んでくる。うざい

「んなわけ無いだろ!行くぞ」

外は雨が降ってた。あいにく傘を忘れた。

「あれー?傘持って来なかったのかい?あ!もしかして私と相合い傘したかったとか?」

「ふざけんな。折りたたみ傘持ってるから結構だ。」何か今日の仁奈はおかしいような気がする。

いつもは今日みたいに何回も絡んでこないのに。

「仁奈。なんかあったか?」

「んー…別に。だって渚が最近上の空なんだもん。いつもボーッとしてるから。ぼっちな渚と喋ってるのにさー…全然盛り上がらないじゃん」

「誰がぼっちだよ…でも最近は独りじゃないぜ。仲良くなった奴がいて、多分その時俺、そいつのこと考えてたんだ。」仁奈の顔が少し曇る

「へぇー…どんな人?」

「童顔だし背が小さいけど、まあうん。かわいい…ところもあるかな?」

「ふーん良かったじゃん」

「ああ。めっちゃ嬉しい!」

「私といるときはそんな嬉しそうな顔してくれないくせに…」仁奈がぼそっとつぶやく。だけど聞こえなかった。

「ん?何か言ったか?」

「何も言ってない。本当に良かったね。」

「え?何でお前泣いてんだ?」その時仁奈は急に駆け出した。


[仁奈]

私は駆け出した。できるだけ渚から離れるようにして。駆け出したという感覚が分からなかった。地面を踏みしめるごとに胸が痛む。

かわいいってことは女なのかも。

彼女できたんかな?

素直になりたい。本当は渚のことが好きだ。だから離れないでって伝えたかった。馬鹿みたいだ…

走る私を照らす夕方の夕日は私の心を突き刺すように眩しかった。

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