リフティングと絡み合う恋

俺は風吹が居る病院に着いた。

仁奈がなぜ急に泣き出して走り出したのかが分からなかった。

それを分かってあげれない俺も不甲斐ない。

頭の中でずっとそのことがぐるぐると回っている。

そして病室のドアを開けた。

「風吹」

「あ!渚くんだ!1日ぶりだね」

「てかお前何やってんの?」

「見れば分かるでしょ?サッカーボールを磨いてるとこ。」風吹はベットの上で丁寧にボールを磨いていた。

「こうしなきゃ糸がほつれちゃうから」そして突然風吹はこう言い出した。

「ねえ渚くん!サッカー見せて!!」

俺たちはそう言われて病院の公園に行った。

「ここってリハビリとかする人が来たりするんだ〜ところで渚くんはリフティングできる?」

「ああ。前にだいぶ練習したから」

そう言ってボールを蹴る。

足の上でトントンと跳ねるボール。

でもいつもより上手くできない。蹴っては外れ、の繰り返しだった。

「なんか上手にできないなあ…」

「一旦休憩にしようよ!」

そう言われて近くの木の下に移動する。

「…渚くんどうしたの?」

「え…何が?」

「何か暗い顔してたから。悩みとかあるの?」

「…うんまぁ…」

「話して。僕ら親友なんだから」

そして俺は風吹に仁奈との出来事を細やかに話した。

「うーん…そっかー…渚くん鈍感って言われない?」

「へ?何が?」

「渚くんは泉さんとずっと一緒に居たいの?仲良くしたいの?」

「ああ。もちろん。あいつは幼なじみだからな」

「恋愛対象として見たことはある?」

「え…恋愛対象??」

「ずっと側に居たいーって思ったりドキドキしたりとか」

仁奈のことは好きだ。だけど恋愛対象かと聞かれたらどうなのか…自分でも分からない。

「まずはさ、明日学校で話してみたら?」

「そうする!このまま気まずいのも嫌だからな」

「よし!相談も終わったことだし渚くんのリフティング再開だー!」

俺がさっき蹴ったボールを手に取り、もう一度蹴った。

軽くはずんで、何回も続く。

足、膝、頭。軽快な音に合わせてボールが宙に浮く。リフティングが全然できなかったけれど何回も練習をした初心が蘇る。

「よっしゃー100回!!!」そしてボールを取った。

「すごい!僕も治ったら100回できるようになりたい!!」

「それだけサッカーが好きなら、風吹も無限にできるよ」渚は無邪気に微笑んだ。

そして俺たちはまた風吹の入院部屋に戻った。

「悩み聞いてくれてありがとう」悩みを他人に話したことがなかった俺は照れくさく、少し嬉しかった。

「いつでも頼ってね!僕悩み聞くの得意だから!」

「風吹は悩み無いの?」

「……あるわけ無いでしょー!元気いっぱいだから」

「そっか!なら良かった!俺にも何かあったら相談するんだぞ」

「うん…ありがとう!!」

「じゃあまた明日!また来るからな」渚くんが手を振った。日常的だけどやっぱり寂しい。

「またね!」

僕は悩みを素直に言えなかったことを後悔しながらも、これで良かったんだ。と安心する気持ちも持ちながら、僕はまた一眠りする。



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