馬鹿だなぁ私って。

私は家に帰って枕に顔を埋めた。

目が腫れてしまわないようにまぶたに力を入れて思い出した。

私は渚のことが好きだ。そう確信した。


幼い頃隣に引っ越してきた渚。

お母さん同士が私の家で話している間、私はずっと本を読んでいた。

「なにそれーおもしろいの?」

渚は興味津々に本を覗いてきた。

「え…うん、まあ。」

最初の頃は私のフリータイムを邪魔するうざい奴だとしか思ってなかった。

「仁奈!一緒に帰ろ」いつの間にか渚は私の相棒になっていた。

どんなに辛いことがあっても、苦しいことがあってもずっとそばにいてくれた。

両親からのプレッシャーに耐えきれなくて泣き出してしまった時、渚は私の手を取って公園で話を聞いてくれた。テストの点をクラスメイトに馬鹿にされた時は私の代わりに怒ってくれた。  

そんな渚に私は惹かれていた。

カッコイイとかイケメンだから好きとかそういうのはなんか違う。

渚といると心の奥からじんわり暖かくなる。

それが好きだという気持ちだとはずっと分からなかった。

でもこの前あんなことを言われた時、初めて複雑な気持ちになった。

苛立ちではない。孤独感?なんだろうか…

〘嫉妬〙

…これだ。

ああ。いつの間にか渚のことが好きになってしまっていたんだね。

これも全部私の独りよがりだって分かってる。

渚は色んな人から好かれている。

ははっ馬鹿だなぁ。なんで?

すべて私のエゴ。

明日学校に行きたくない。

渚に理由を聞かれたらなんて答えるの?

ねぇ誰か。教えてよ。私は何をしたらいいの?

いつの間にか力を入れていたまぶたからは涙が溢れ出ていた。

…本当に自分がきらいだ。



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