約束の思い出
朝、目が覚めた。
いつも通りに少しカーテンを開けて朝日の光を部屋に入れた。
窓はほのかに曇っていて、ひんやりと冷たいけれど春の朝日は撫でるように暖かい。
僕の足は最近動かしにくくなってしまった。
多分、病気の進行だと思う。
でもこれが僕の運命であるならば受け入れるしかないだろう。
だけれど、サッカー選手になりたいという夢も諦めなければいけないのだろうか?
足も動きにくいのにサッカーなんてできるはずが無かった。でも、心の底の色々なサッカーの思い出が忘れられない。時々全身に来る筋肉痛のような痛みよりもずっとこの心の痛みのほうが痛かった。
そんなことも考えるのが嫌でもう寝たくないのに、むりやり再び眠った。
――
晴天の夏、僕は5歳で柚香は6か7歳だった。
青葉が茂るあの日に僕らは公園ではしゃぎまわった。
「ゆずおねーちゃん!サッカーしよ!」5歳の僕が柚香の袖を引っ張ってそう言う。
「いいよ〜」
「じゃ、いくよー!」元気な柚香が明るい声でそう言う。はっきり言って、柚香はサッカーがあまり得意では無かった。何回も色んなところに転がっていき、その度に二人で汗だくになって走り回った。
時間が立つのを忘れるくらい遊んで、近くの木陰に腰掛けた。
「はー…疲れた〜」タオルで顔の汗を拭っている柚香が自動販売機で買ったキンキンに冷えたスポーツドリンクを僕に差し出す。僕はすぐに受け取り、ごくごくと飲み干す。
「ねぇゆずお姉ちゃん!僕ね、また一緒にサッカーしに行きたい!これからもずぅーっと!」
「もちろん!風吹とするの楽しかったから!また来よ!」
「約束だよ!絶対にぜーったいに!」
僕らは夕焼けを背景にして小指を交えた。
―――でも、その約束は今になっても果たされなかった。
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