分からないことだらけ
「はーー…そんなこと聞いてないっつーの…」
俺は自室のベットにダイビングしてため息をついた。ベットは俺をはねのけるように大きく跳ね返した。
まだ朝は早かった。
学校に行くにはまだ断然早かったけれど二度寝ができなかった俺は仕方なく自室のベットの上で考え事をしていた。
昨日、柚香さんが風吹の姉だということを初めて知った。だけど、ずっと柚香さんの表情は暗くうつむいていた。
「風吹の病気は…もう一生治らないの。」
弟だと知ったあと、唇を噛み締めてそう言われた。
治らないってどういうことだ?
風吹はサッカー選手になるために努力してきたんじゃ無かったのか?
意味がわからない。
そもそも風吹は病気のことを知っているのだろうか。
病気の詳細については話してくれなかった。
けれど彼女の表情からして言いにくいものなのだろうと思った。
ピリリリ…
俺の隣の充電してあったスマホが鳴った。
スマホの画面には仁奈から着信が表示されていた。
通話アイコンを押す。
「あ。もしもし?渚?起きてたんだ」
「起きてたよ。仁奈もこんな時間にどうしたんだ?」
「いや…昨日のさ柚香が言ってた話がさ、頭に残っちゃって。普段柚香はあんな顔しないから。」
「あと、本当に風吹はもう治らないのか…?」
「分からない。だからさ、今日もう一度二人で柚香に会って、一緒にその風吹くんの病室に行ってみないか相談してみない?」
「…上手くいくかな?」
「やってみないと分からないじゃない。柚香もきっと納得してくれるはずだよ。それに私達だってまだ分からないことだらけでしょ?私も柚香のことが心配だから。」
「ああ。そうだな。うん。」
「じゃ!また学校で。」
プツリと電話が切れる。
やっと日が登り始めた空はどこまでも紅く澄んでいて赤の絵の具を水で溶いたような色がしていた。
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