知らなかった真実

「仁奈ちゃん〜今日放課後何か用事ある〜??」

「んーとね、今日は幼なじみのサッカー部を見学しようかなーと。一緒に帰るから暇つぶしとして。一人じゃ気まずいし谷川先輩も来る?」

「え!いいの〜?やったぁーでも先輩呼びはやめてね!柚香でいいから」

春の爽やかな甘酸っぱい風が吹いて柚香の長い黒髪がサワッと揺れる。

私の友人(先輩)の柚香は凄くおっとりしている。

私と柚香の母同士が仲が良かったので、お姉ちゃん的存在でずっと仲良しだ。

二人で校庭のサッカーコートの近くのベンチに腰掛ける。

それと同時に試合開始のホイッスルが鳴った。

「仁奈ちゃんの幼なじみ君ってどれー?」

私は渚を指さした。渚は美しいフォームでマークをかわしている。

「…もしかしてだけどー、いや、なんとなくだけどね?仁奈ちゃんはあの子のこと好きなの?」

図星をつかれ動揺してしまう。

「いやいや。そんなことないし…」

「顔赤くなってるよ〜やっぱり図星か〜」

もう隠しきれなくなって本当のことを話した。

「ほうほう…幼なじみからの恋愛展開!いいねぇ〜」

「しーっ!声が大きい!」

「そう言う柚香は好きな人いないの??」

「えー…私はねぇ〜…仁奈ちゃんかな☆」

「そういうことじゃなくて!」

「お!見てみて!仁奈ちゃんの幼なじみ君がシュートしそうだよ」

「えっ?!」

私はすぐに渚を見つけた。

まだ春なのに汗だくになって必死に点を取ろうとしていた。…かっこいい

――シュート!!

点が決まった。

「お!中々やるじゃん!」私は柚香とハイタッチをした。

そのまま私達は渚の試合を見続けた。


「は〜…やっと終わったー」

疲れ果てた渚がヘタヘタになって帰ってきた。

「おつかれ〜」

「ん…?仁奈?隣の人って誰?」

「私の友達。」

「こんにちわ~!仁奈の友達の谷川柚香で〜す」

「こんにちは。谷川先輩。部活見に来てくれてありがとうございます!」

「いえいえ〜」

「シュートが決まって良かったね!!」私は渚に声をかけた。

「いやー本当に嬉しい!!これで風吹に自漫できるー!!」

「え…風吹って??」柚香が少し不安そうな顔をして聞いた。

「谷川風吹っていう同い年の友達です。まあ、入院してるんですけどね」

「それって…多分、私の弟だと思う」うつむいた、柚香にしては低い声でそう言った。

私はとても驚いた。柚香に弟がいるなんてこと一度も聞いたことが無かったから。でも、名字が同じだったから確かなのだろう。

さっきまで吹いていた爽やかな春風は少し雨と冷気を帯びていた。

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