チーム選考戦

「みんな。よく聞け。今日の練習試合で試合に出場するのに相応しいと思った選手を選び、次の大会で出してやる。」

部活の顧問の先生は先輩だけじゃなくて2年の俺らも出場できる可能性がある。と告げてくれた。

これは好成績を残すしかないじゃないか。

「今までの成果を十分に出し切って試合に臨むことだな。いいか?これは練習試合だが、本番の試合と同様だと思うくらい真剣に挑め。そうじゃない奴は帰れ。」いつになく顧問の先生の口調が厳しい。

全力を出してやろうじゃないか。


―――

ピーッ

キックオフのホイッスルが鳴る。

蹴り出しは味方の3年の先輩だ。

走れ。走れ

マークがつかないようにうまく敵を交わして先輩のパスが通りやすい位置に走る。

俺たちの策略は三角形を意識してパスを回すことだ。そうすればリズミカルにパスが来る。

次は俺のターンだ。

三島先輩からパスが来た。

このボールを逃さないように敵のゴールに近づく。

時々来るスライディングも避けて前へともがく。

よし。ここまで来たら次は山越先輩にっ…

パスをミスった…空振りをしてしまった。

そのすきに敵にボールを取られてしまった。

…惜しかったのに…

「高藤!ボーッとするな!まだ次がある!」

三島先輩からの喝が入る。

だめだ。しっかりしないと。まだ試合は終わってない。試合終了までもがき続けなきゃ。

走って敵のマークにつく。

アシストが得意な選手をマークすることで多少は点を取られることを防げるはず!

敵チームがどんどん自分たちのゴールに迫ってくる。

何としてでもカットしなければ…!

俺はアシストの赤坂先輩のマークについた。

流石に選手である先輩はマークをかわすのが上手い。必死にマークしても足が追いつかない。

その時、三島先輩がボールをカットした。

よし。今だ!

俺は近くに来たサッカーボールをドリブルをして敵のゴールへと走った。

「山越先輩っ!」そしてパスを渡した。

今度はミスをしない。そう自分の中で決めた。

そして味方の他の先輩にパスが渡る。

次は俺の番だ。

パスが回ってきた。もうすでにゴール付近まで来ている。

シュートできるか…?いや。やるしかない。

俺はサッカーボールを全身全霊で蹴った。

そのボールは思いの外ドライブがかかっていてキーパーを逸れてゴールした。

パシッとゴールネットにボールが当たる爽やかな音が響く。

ゴールできたんだ。こんな俺でも。

「高藤!!やったな!」

キャプテンの三島先輩と山越先輩や他の部員の人も駆け寄ってくる。

嬉しい。この一言では言い表せない感情が宿った。

「ありがとう。みんな」そんな皆に精一杯の笑顔を返した。

この後も俺たちは守備を意識して試合終了のホイッスルが鳴るまで戦った。

結果は1:0。俺たちのチームは勝ったんだ。


「みんなよく頑張った。ここで今日俺が見定めて決めた選手を決める。今から呼ばれる選手たちは次の大会に向けて努力に励め。」そう顧問の先生は言った。

先生がメンバーを読み上げていく。俺の胸は緊張でドキドキしたままだった。

「高藤渚。」先生が俺の名前を呼んだ瞬間、時間が止まったような気がした。

胸の高鳴りを抑えてハイっと気勢よく返事をした。

メンバーが決まった後、俺は先生に呼び止められた。

「高藤。お前成長したな。前よりずっと上達してる。これからも頑張れよ」トンっと先生から背中を押された。

「もちろんです!ありがとうございます!」

俺は泥だらけのユニフォームで頬を伝わる水気を拭き取った。




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