危機一髪の前半戦

試合当日。俺の試合は柚香と仁奈が観に来て、撮った動がを風吹に見せる事になった。

「よお、高藤。試合の準備できたか?」

「三島先輩!準備万端です」

「あーあ…俺の試合誰も観に来てくれてねぇよ…お前、人気者の谷川さんとかまで連れてきちゃってさ…この女たらし!」

「先輩、あんま勘違いしないでください、それより試合始まっちゃいますよ!」


――ピーーッ

敵チームからのキックオフ。

今のボールを持っているのは背番号10番。敵チームの司令塔だ。

「高藤!お前はゴール付近の奴らをマークしろ!俺が10につく!」

「ハイッ!」足を速く動かして自分のゴール付近守備を徹底する。そう、俺は背番号2番のディフェンダーだ。

俺らのチームの作戦は、ディフェンスを固めて、前半戦は一点も取らせない。そして後半戦からフォワードを中心として本気を出していく。

だから、前半が俺の一番の見せ場!

その時、ボールはまだ敵チームが所持していて、敵のキャプテンへと渡った。

「山越!カットしろ!」三島先輩が司令を出す。

でもドリブルが早いことで有名なあいつは止められない。そして、そのドリブルは止まることなく俺の目の前に来た。

「たかと―」三島先輩が声を出す前に俺の体は動いていた。スライディングで相手のボールをカットする。…が素早い足さばきでボールを宙に浮かばせて華麗に避ける。

これは、まずい。  

そしてシュートを打った。幸い、ボールはコースを外れ、ゴールポストに当たった。

「渚ーなぁにやってんのよ!もー!危ないじゃない!」上から仁奈の野次が飛んでくる。

「そうよそうよ〜でぃふぇんだー?なんでしょ?」

いや絶対馬鹿にしてるだろ奴らは。

それを軽くあしらって、また元の位置につく。

これじゃ勝てない。と感じた。

そして、その後も必死に守り続け、何度も点を入れられそうな危機にさらされながらなんとか0-0に保つことができた。

結局俺はボールを1つもカットできずに心がザワついたまま前半戦が終わった。




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