先生
「風吹くん。お邪魔します。」
病棟のドアがゆっくりと開いた。重い黒縁メガネに、優しそうな眉、ふわりとしている黒い髪。
この人は。僕の学校の先生だ。
「体調はどう?」うまく声が出ず、ぎこちなく口を動かす。
「うんうん。治療頑張ってね!みんな待ってるよ」
……そう、か。みんな僕のこと忘れてると思うけど
「で、今日は学校で配られたプリントを持ってきました。」先生は半年に一回くらい分厚い束になったプリント類を一気に持ってくる。まとめられた輪ゴムがはちきれんばかりに耐えている。
「できそうなときだけでいいからね」ニッコリと笑う。先生も自分が身動きが取れないことを察したのだろうか?それとも僕の反応がないため気まずいのだろうか?ずっとソワソワしている。
先生は何か喋ろうとあたりを見回して、僕のサッカーボールを見つけた。
「懐かしいなぁ、サッカーか。俺もやってたなぁ…そういえば。馬鹿みたいに毎日、日が暮れるまで泥だらけになって…あの頃は必死だったな」
遠い目をしながらボールをぼんやりと見ていた。
メガネが日光に反射して白く光を放っていた。
「さてと、俺の昔話は良いとして、風吹も治ったらうちのサッカー部の奴らとしてみるのはどうだ?」
そうしたい。嬉しい。どんな感じなんだろう。好きなことを思う存分やってみたい。
「じゃあ、またね風吹くん。」
さようならの代わりにゆっくりと瞬きをした。
音が消えて、改めて自分が1人だと気付かされる。
病気との戦いは一対一。
だから僕は諦めない。絶対に夢を叶えてみせる。
夢を追うサッカーボール うたたねプリン @utatanepurin
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