向き合いたい。そして側に居たい。
バスの最奥席に三人で座って私は窓の景色をボーッと眺めていた。
仕事帰りのスーツを着たサラリーマン、歩きスマホをしながら歩く帰宅途中であろう学生や杖をつきながら歩くおばあさん。
―次は…〇〇駅前…お降りの方は……
刻々とバス停を過ぎていく。
私はいま渚くんと仁奈ちゃんと一緒に弟の病院に行くためにバスに乗っていた。
どうしてこうなったかという経緯はというと…
私は風吹に後悔する人生を送ってほしくなかった。
でも流石に余命を本人に伝えるのはリスクがあったからそれは避けようと思う。もしかしたら風吹は心を閉ざしてしまうかもしれないから。その時の責任は全て私になってしまう。
でもせめて姉として風吹の傍に寄り添ってあげたかった。私は風吹の病気が少しずつ進行していくに連れてあまりお見舞いに行くことができなかった。いや、現実を突きつけられるのが怖くて行かなかっただけだと思う。でも本当はちゃんと向き合わなければいけない。
仁奈ちゃんがそう教えてくれた。
弟には渚くんという友だちもいる。君のことあんなに私と同じぐらい真剣に考えてくれる友だちがいるなんて…本当はコミュ力めっちゃ持ってんじゃん
向き合いたい。そして傍にいたい。最期まで姉としても応援してあげたい。
君たち三人には沢山助けられたもん。
今度は私が一歩踏み出す番だよ。
―次は…〇〇駅前…お降りの方は……
「じゃ、そろそろ降りよっか。」
新緑の季節。少しずつ街に緑が取り戻って来た。
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