『これから見つけます。』
「皆さんは将来の夢は持っていますか?」
昼食のあとのうららかな日差しが当たる教室で担任の先生が道徳の授業をしていた。眠くてウトウトしている人もいる。
「この紙に書き込んでみましょう。」
前から回されてきた白紙の紙。
将来の夢なんて決まっているはずがない。
先生、難しいっすねこの問題。
成績優秀な奴らはきっと医者とか書くだろう。
先生がクラスを見回る。
「お〜医者が多いんですね〜いい将来の夢です。」
先生、いい夢が医者なら悪い夢ってなんですか?
そんなの自由じゃないんですか?
俺はシャープペンがずっと止まったままだった。
「特技を活かす夢とかも素晴らしいことだと思います。」
俺の特技って…サッカー?
んなわけない。未だに試合にも出られることが少ないのに特技って言えるのだろうか?
「はい!今回はここまでにします。終わらなかった人は宿題で。進路を決めるとき大切な考え方になるのでしっかりと考えてください。」
――――
俺は放課後、いつもの通り風吹のところへ足を運んだ。
「なぁ風吹。お前将来の夢ってあるか?」
「僕は将来、世界一のサッカー選手になるんだ!」
そう告げた君の顔は今まで見てきた何よりも輝いていて眩しかった。
「サッカー選手??」
「うん!将来、大好きなサッカーを続けていたいから!」
風吹の部屋の窓際の棚にはサッカーボールが置いてあった。いつも大切に大事にしていたサッカーボールが。
でも俺にはただのボールには見えなかった。
なぜか、輝いていた。不思議だ。
「将来の夢って難しいな…」
「渚くんはきっと何にでもなれるよ」
「俺が?成績もそこまで良くないのに?なんにも取り柄もないんだよ??…」
「成績とか名誉とかなんて必要ないんだ。自分が心から好きだと思うことでいいんだよ。こんなの僕が言うことじゃないけどね。」
「そうか…そっか。それでいいんだ。俺はこれから見つけていけばいいんだ。」
「ありがとな。風吹。」
だから俺は将来の夢を書く紙にこう書いたんだ。
『これから見つけます。』と。
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