偽りの希望と嘘つき
「ねぇお母さん!風吹に病気のこと伝えなくていいの??」私は忙しいお母さんに声をかけた。
「いいの。柚香は気にしなくていいのよ。」
苦しげに笑顔を取り作るお母さん。
「でも、だって風吹にはもう時間が…」
「柚香、もう風吹のことは忘れなさい。私は柚香に元気に過ごしてほしいの。」
そう言ってお母さんは会社に出かけてしまった。
忘れろって…
風吹の病気はALSという名だ。
筋肉が徐々に弱くなっていき、最終的には呼吸すらできなくなり、死んでしまう病気。
私達は風吹が10歳のとき風吹の余命宣告を受けた。
「短くて3年、長くて5年でしょう。」
大切な弟が死ぬ。そんな事実が私の心をガラガラと崩していった。
事実が受け入れられなくて、心が追いつかなくて。
どんなに泣き叫んでも事実は変わらなくて。
そんなことも知らない君はいつでも前を向いていて、会うたびに胸が締め付けられた。
もう風吹には時間がほとんど無い。
1年も無いかもしれないのに。
大人はいつだって嘘をつく。いつか治るよって言い訳を言って先延ばしにして。嘘つきだ。
――
風吹。私の大切な弟。いつだって大好きなんだよ。
姉なのに守ってあげれなくてごめんね。
私は弟の余命宣告を受けた日と同じくらい泣いた。
自分の無力さを感じながら。
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