第2章

第13話 魔力測定 4歳Ver.

今日で4年。このヴィクトゥーラに来てから4年の歳月が流れた。

4年も経つとここでの生活も、変わった家族にも慣れてきた。


誰もいない部屋で静かに過ごすのも好きだったが、誰かがいる生活もやはり好きだったのだと思い出すことができるぐらいには、今の自分を確立できるようになってきた。


今日はセレナの4歳の誕生日であり、この世界で4歳は重要な歳だ。午後から誕生日のお祝いをするので、午前中のうちに王都の教会に行って魔力測定をするのだ。


この世界には魔法があり、セレナは勝手に書斎に会った魔法関連の書物に書いてある魔法を実践していたが、普通はこの4歳の魔力測定を行ってから自分の適性魔法を知り、それぞれの家庭ごとのしきたりで魔法を学んでいくことになっている。

しかし、ヴァルキトア公爵家は他の家とは一風違い、それぞれがやりたい時期から好きなことを好きなだけできる自由な家庭だったので、セレナは思う存分やりたい魔法を片っ端から試してきた。もちろん、そのことを家の人たちは把握しており、両親も兄弟も静観して見ている状態だ。


ヴァルキトア公爵家は王都にはあるのだが、歴史的な背景から王都の一角を占領しているため、王都の街に出るのに馬車を走らせて1時間ほどしてやっと着く場所にある。そして、セレナたちを乗せた馬車はまだ公爵家の敷地内を走っていた。


馬車はすべてで3台用意しており、セレナ、ジュリ、ディオ、ベリーで一台。、イル、ノース、ルス、ゼクスは後ろの馬車に、お父様とお母様は前の馬車にそれぞれ乗っている。本当はセレナとルスは逆だったのだが、ディオの大いなる切望により、セレナは兄たちが乗る馬車に乗ることになったのだった。


ジュリとベリーは二人でお茶を飲みながら話しており、ディオは馬車に乗った瞬間に寝てしまった。きっと、早起きがきつかったのだろう。当の本人のセレナはというと、誕生日に父親に買ってもらった約500冊の本の中から少し引き抜いてきたものと、貴族リストを馬車の中に持ち込んで、黙々と読書に耽っていた。


この国、ティアドラ王国は公爵家が6家、侯爵家が6家ある。王族の血が最も濃い『ヴァルキトア公爵家』、現宰相がいる『フォンドヴィラ公爵家』、家族関係であまり良いうわさを聞かない『シエナファンドル公爵家』と『ミレウドゥーシャ侯爵家』、多くな優秀な人を輩出し、セレナの家庭教師がいる『ルアトア公爵家』、大臣をよく輩出する『マディーシャ公爵家』、王家の影の役割を担っている『ファルトーニ公爵家』、現騎士団長がいる『スティード侯爵家』、上位貴族で一番平和主義の『ラフドア侯爵家』、好戦的な性格の人が多い『ホライズン侯爵家』、動物や植物をこよなく愛している『アルマニスタ侯爵家』、研究者基質の人が多くほとんど社交の場に出てこない『グローツェ侯爵家』だ。貴族リストをペラペラとまくりながらセレナは一つ一つ記憶に入れてく。


上位貴族になるにつれて曲者揃いなので、よくこの国は平和を保っているな、と個人的に思っているとジュリがセレナに話しかけてきた。

「セレナの魔力測定か…君の適性魔法って何だろうね?」

「さあ、私にはさっぱりわかりません。まあ、今日は魔力測定なので受ければわかりますよね。」

セレナがそう言うと今まで寝ていたディオが目を開けて真剣な顔でこちらを見てきた。

「セレナ、いいか。適性魔法が多かったら、一部だけ公開にしろ。」

「確かに、いろいろと危険ですのであまり多くを開示しないほうが良いでしょうね。」

とベリーも頷く。

「セレナのことだから、全属性適性があってもおかしくない。というより、必ずあると思う。今のところ私達は量とかは多かれ少なかれ全員、全属性持ちだ。とりあえず、炎、水と風とかにしておいた方がよさそうだね。」

「わかりました、そうします。」


元々セレナは開示情報を操作しようと思っていたので、長男の提案に乗ることにした。

ちなみに、ジュリは今日まで春休みで実家に帰省していた。明日からは初等部1年以外は全学年共通で短期留学に2週間行くことになっているのだ。去年は2週間分の課題が出されて花の月になる前日まで実家にいたのだが、今年は明日から留学なのでここ最近は準備に忙しそうにしていた。


今年の留学先はイヨ王国で、日本と似た国と聞いている。食文化もイヨ王国の方が進んでいるらしく、セレナはいつか行ってみたいと思っている。



それからいろいろ話していると、馬車の速度が落ちてきて、外を見ると、外の景色がいつの間にか変わっており、王都の街が広がっていた。窓の外にはやたらと豪華で大きな教会が見える。全体的に白で統一されており、朝日を浴びて神々しいまでに光り輝いていた。


教会内に入ると、のステンドグラスが太陽の光によって反射して様々な色を放って輝いており、奥にある大きな扉の横に兵士たちが立っていた。セレナたちが近付くと、兵士が一礼してから扉を開ける。


すると、奥には広々とした空間が広がっており、天井がドーム状になっていた。正面と斜め向かいにそれぞれ3つ扉があり、セレナはみんなに挨拶してから扉に向かった。


手で開けるつもりで、扉の手前で右手を上げようとすると、突然勢いよく向こう側に扉が開く。今まで兄たちの魔力測定で見送った時はこんなことはなかった気がするのだが、システムが変わったのだろうか。


セレナは疑問に思いつつも、前に進む。一定距離離れると扉が再び閉まり、部屋の中に静寂が訪れる。部屋の中は中央に光る石があり、光を強調するためか、それ以外の光源がなかった。前回来たときは明かりがついていたような気がするが、これもシステム変更に伴うなにかなのだろうと勝手に結論付けた。


意思の前に立って「『魔力測定開始』」と唱えると石の中にはめ込まれた銀の板が尋常じゃない光を出し始めた。


(目が光でやられそうだから、早く終わってくれないかな?)


一人部屋で心の中で文句を言っていると「クスリ」と笑い声が聞こえたが、見回す限り誰もいなかった。そしていつの間にかに板に結果が出ており、部屋の中が明るくなっていた。

『魔力測定 セレナリール・ヴァルキトア4歳

適性魔法:全属性

特殊能力:神の加護、自由の造形、神力』

怪しい能力もあったが、あえてここは言及しないほうがいいところだろう。とりあえず、開示設定はジュリの言ったとおりにして、セレナは部屋を出ることにした。


手のひらサイズの銀の板を、扉の中から持って現れたセレナを見た家族はそれぞれその結果を見て反応を示した。先ほど馬車に乗っていたメンバーは「ああ、こいつ全属性持ちか」という反応で、ルスは「ふ~ん。」と言いながら意味深な顔をしている。双子はそれを見て何かを察したのかきらきらとした目でこちらを見てきた。お父様とお母様は「…なるほどな。」「あらあら~。」と何となく察している感じの反応だった。


ただ、あまり反応の良くなかった家族に何を思ったのか、その場にいた神官は「まだ、4歳ですから、これから適性魔法が増えるかもしれません。そう、深刻に考えなくても大丈夫ですよ。」と謎のフォローを入れていた。



しかし、その場に板ヴァルキトア公爵家一同は心の中で思った。


『いや、そうではない。』と。

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