第2話 この世界には魔法があるようです
私がこの世界に生まれてから一年が経とうとしている。
今日も今日とて私は子供として過ごしている。
最近は完全に言葉を喋れるようになった。
周りからは「神童なのでは?」と言われたりするが、前世があるから喋れるのだと私は思っている。
一年もこの世界で過ごしていて分かったことがある。
まずはこの世界の名前、星の名前はヴィクトゥーラというらしい。
誰がつけたかは不明だが、とりあえず私が元いた地球という場所とは違うところなのは分かった。
次に分かったのがこの家のこと、この家は公爵家でヴァルキトア公爵家というらしい。
私の名前はセレナリール・ヴァルキトア、この公爵家の一人娘だとかで現在進行形で大切に育てられている。
私の他にも兄が4人いて、一年後には弟か妹ができるそうだ。
そして一番知りたかったこと、それは魔法が使えるかどうかだった。
なんとこの世界では魔法を使うのが普通らしい、元々魔法を使ってみたかったので、魔法が使えると本で読んだ時はその場で飛び跳ねそうになってしまった。
結果としては、公爵令嬢らしからぬ行為なので実際にはしなかった。
と、まあ今のところ分かっていることはこれくらいだ。
転生者の話はまだ見つけられていない、なぜなら家に置いてある場所が図書館だからだ。
つまり、広い、ものすごく広い、全部読むには数年かかりそうなぐらい置いてある本が膨大でなかなかお目当ての本が見つからなかったのだ。
だから地道に探すことにした、元々本を読むのは好きだったので異世界の本を読むのも面白かったりする。
家族は私がまだ1歳でもないので本を読めないどころか字も読めないと思っているらしく、
私がよく本を開いて見ているのはきっと兄たちの真似事だろうと良い感じに解釈してくれるので本当に助かっている。
一応来年からは家庭教師をつけられるとかで文字の参考書のようなものを貰ったのでそれを見て文字は覚えた。
とは言ってもこの国の文字はほとんど日本語や英語なので苦労はしなかった。
メイドのモカには薄々私が普通の子供ではないことに気付いている気がするが彼女は誰にもそのことを言っている様子はないので安心しても大丈夫だろう。
まあバレたとしても「天才児」という名ばかりの名称が付くだけだからバレたとしても良いとも思っている。
まあ説明はここまでにして今日も図書館(勝手にそう呼んでいる所)に行こうか。
もう朝の着替えは済んでいる、なぜならメイドに着替えさせてもらう時間を本を読む時間にあてたいからだ。
説明している間に日も上がってきたことだし、もうそろそろモカが迎えにくるだろうからじっとベッド脇で座って待つことにした。
数分すると予想通りにモカが部屋に入ってきた。
ベッドから降りて彼女のところに向かう。
「セレナリール様、朝ですよ。起きて…ますよね。さすがです!朝食の準備が整っていますけれど、どういたしますか?」
私は「うーん」と考える素振りを見せてから答える。
「今日はお母様達と食べることにします。」
訳:お母様達はまだ起きていないだろう?だから私はみんなが起きるまで本を読むよ。
一年も私のメイドをやっていて慣れたのか彼女は「かしこまりました。では、いつも通りに書斎にいきましょうか」と言って私の後についてくる。
これが最近の私のルーティーンだ、朝から書斎に入り浸っていて本の虫と化している。
公爵家は広い、広いから書斎もその分遠いのだ。
貴族の令嬢だからあまり運動をしないということは異世界ものの話でよくあるがそれは事実だった。
大体の貴族の女性は一日あまり動かないらしい。でも書斎に行くために体力が必要なので私は動くようにしている。
歩いて数分後、やっと書斎の扉の前に着いた。
すかさずモカが扉を開けてくれる。
(さすが有能な私専属のメイドだ、私が嫁に行く時には連れて行こう。)
中に入るといつも通りの図書館、海外にあるような大きい図書館そのものだ。
真ん中に吹き抜けがあって3階までずらりと本棚が並んでいて、これまたぎっちりと本が入っている。
壮観という言葉はこういう時に使うのかもしれない。
私は迷いなく奥の本棚に向かう。
まだ朝早いのもあって誰もいない。
(まあ使っていたとしても兄か、この家に招待した来客だけしかいないだろうね。)
奥の本棚には魔法書がずらりと並んでいる本棚があるのだ。
まず手に取った本のタイトルは『魔法入門1』というものだ。
実は魔法の内容が書いてある本を読むのは初めてだ。
なぜなら、今までは魔法の歴史について調べていたからまだ読めていなかったのと、ここの本棚を見つけたのが昨日だったからだ。
とりあえず一冊本を手に持って…持とうとしたけど持てなかったのでモカに手伝ってもらった。
書斎に置いてある机に置いてもらったので椅子によじ登って座る。
少々令嬢らしからぬ行動だが(信頼しているメイドの)モカしか見ていないので大丈夫だろう。
気を取り直して本のページをめくった。
最初に書いてあったのは注意事項的なもので、要約すると、魔力量によってできる魔法が違うということ。属性もできる属性と、できない属性があること。魔力を使いすぎると魔力切れを起こす可能性があるので要注意ということが書かれていた。
次のページをめくるとおじいさんの顔が出てきた。
きっとこの人がこの本を書いた本人の顔なのだろう。
別におじいさんの顔は求めてないので次のページを捲る、そこには目次があって、見た感じだとこの本は300ページほどあるらしい。
ちょこちょこ進めればいいか、と考えながら最初の魔法のページを捲る。
そこには生活魔法というものが記載されていた。
生活魔法は大体の人が使える魔法らしい。
あとで試して見たいので魔法の使い方を見ると
『この魔法は生活において必要な最小限のこと、たとえば料理や洗濯、物を運ぶなどの生活に必要なことを魔法を使ってする事象のことを言う』
と書かれており、さすがにまだ体が小さい私には手が出せそうにないのでこれはもう少し体が大きくなってからにしようと決めて、違うページを開く。
パラパラと開いたそこには水魔法のことが書かれており、そこにあった水の玉ができるらしい。
これなら私でもできそうだ。
生活魔法はもうちょっと大きくなってから料理をさせてもらう時に使ってみようと思った。
普通の令嬢は料理をしないかもしれないが、そんなことは関係ないだろう
なぜなら、私は普通の令嬢になるつもりはないのだから。
それから一時間後も魔法書を隅から隅まで読み込んだところで家族全員が起きたという連絡があったので食卓へと向かった。
朝の食卓でみんなが揃っていてお父様に私の誕生日プレゼントは何が良いかと言われたので「ノートとペンが欲しいです」と言っておいた。
それを聞いたお父様が少し残念そうにしていたのは気にしないことにした。
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