第3話 2歳になりました

私が異世界に誕生してから2年の月日が経った。


随分とこの世界での生活も慣れてきた。

私が住んでいる屋敷はティアドラ王国の王都近くにあるらしく、郊外のほうにも3つほど領地を所有しているらしい。私の家の家族構成は兄が4人と弟が2人、両親という前世の家族で言う大家族だがこの世界ではこれぐらいの兄弟がいてもおかしくはないらしい。魔物がそこら中にいるため、いつ家督を継ぐものがいなくなってもいいように家族を多めに作るという措置が貴族内にはあるようだ。今はその家族全員がこの屋敷に住んでいる。


私の兄弟は他家に比べると大分変っている、良く言えば個性が強いらしい。

まだ10歳という年齢なのに関わらず頭の切れる兄。

8歳児にも関わらず剣術の才覚が既に頭角を現している兄。

一見普通の貴族令息に見せかけて裏社会を牛耳る兄。

傾国の美女と言われていいほど顔の造形が整っている兄。

まだ0歳にも関わらず言葉を話すことができる双子の弟。

といったように少し変わり者が集まる家族だ。


お父様は国の大臣の一人として城勤めをしていて、お母様も普通とは違うのだがこの話はまた次回にしようと思う。


(私的には特に害があるという訳ではないので、なんでもいいのだけどね。)


私は2歳になった時に家庭教師を付けられるようになったが、私の家庭教師は入れ替えが激しく、やっと最近一人の家庭教師に落ち着いたところだ。勉強に関しては前世の記憶もあってか、あまり苦労はしていない。


来年からは長男が王都にある学園に入学するらしい。

この国では11歳から学園に通うらしく、初等部、中等部、高等部で分かれていて、ほとんどの人は平民貴族関係なく初等部まで通うのだとか。


もちろん私は高等部まで進むつもりだ。理由としては「面白そうだから」の一択だ。


初等部は5年、中等部は3年、高等部は6年となっていて、初等部では編民や貴族の一般常識とそれぞれの属性に合わせた魔法の授業があるらしい。学年では魔法やその他の勉強の総合的なランクでクラス分けをされているらしく、上からS、A、B、C、D、E、F、Gと八段階になっているらしい。


もちろんクラス替えする措置もあり、昇格試験を受けて合格すれば上がることができるらしい。最初に分けられる時には技術力・魔力量・想像力・適正魔法属性の四技能を測って行われるのだとか。


前世で言うと初等部は中高生、中等部は大学、高等部は大学院といったところだ。

初等部はひと学年約1200人とかなり多いが、ティアドラ王国最大で一番施設などの設備が備わっている国が関与している学園なので入学者が多いのは頷ける。クラスは20クラスとかなり多く、学園の広さは東京都一、二個分ほどあり広い。


この国では魔力測定が4回あり、4歳・8歳・12歳・16歳で受ける必要がある。四回ある理由は人によって個人差で魔力の定着が早かったり、逆に遅かったりするが16歳で大体の人が完全に魔力が定着するという研究結果が出ているからだ。


来年は私の魔力測定があるので密かに楽しみにしている。



私は今日も家庭教師から出された課題を早々と解いて書斎に向かった。今私についている家庭教師は高等部を卒業した優秀な人らしく、授業はかなりわかりやすい。

公爵家ということもあってか、兄弟達は一人の子供に二人またはそれ以上の教師がついているらしいのだが、私は彼しかついていないので彼は随分と優秀な教師らしい。


最初は10時間ほどの勉強時間が設定されていたが先生が「セレナさんは基礎の問題ならもう解けるみたいだから、課題を出すね。実は私は一年ほど外国に行く仕事ができてしまってね。私が居なくてもできると思うから頑張ってね。」と言われ、先生は今外国に行っている。


私についている先生は国の外交官をしているらしく、なぜか私の家庭教師と外交官の仕事を両立しながら自分独自の研究もしていたらしい。来年には帰ってくるとお手紙をもらったので帰ってきたら外国の話を聞いてみようと思っている。


先生が出した課題は、約500ページある基礎問題と演習問題が入ったものが5冊ほど、絵画の課題、楽器の練習ぐらいだ。最近はダンスのレッスンや礼儀作法の練習などもあったが前世である程度学んでいたのですんなり教師の出したテストに合格することができた。


私は毎日出された課題をしたら、書斎に向かう。

最近は体も大きくなってきたので一人で本を持てるようになったのだ。


(まあ、まだ上段にある本は自分自身では取ることはできないけどね。魔法を使えばできるけどまだ魔法が使えることはまだ話さないほうがいいだろうね。それに、もうすでに転生者なのがバレているのかもしれないね。今のところ何も言われていないから私からは何も言わないけどね。)


課題は一気にやると一ヵ月もしないうちに終わってしまいそうなので一日1時間と時間を決めてやることにしている。ちなみにこの世界にはタイマーがなかったのでお父様に時計が欲しいと言ってみるととても喜んで宝石が付いている懐中時計と魔石でできた砂時計を買ってくれた。金の模様が書かれており、いかにも高そうなのでそこまで高いのは買わなくてもいいとそれとなく言おうとしたら泣かれそうになったので何も言わないことにしたのは記憶に新しい。


魔法書を読み始めてから私の生活はとても楽しいものとなった。人の目を盗んで、いろいろ試してみた結果、私は全属性の適性があることが分かった。家族にはまだ秘密にしておきたいのでメイドのモカには黙っていてもらっている。


(やはり持つべきものは、優秀なメイドだな。)


メイドのモカは私の好みが分かっているのでお茶を飲むときは必ず甘いお菓子を用意してくれる。甘いものを食べすぎると太ってしまうので運動がてら庭にある森で魔法の練習をしたりしている。


今日は『魔法書 20 精霊と共に過ごすこと』を読んでいる。この魔法書シリーズはウルツライト帝国のシャガール・アディ・ローという人が書いているらしく、このシリーズは全巻で100巻以上あるらしい。今でもどんどん新しい巻が出ているので「プレゼントは何がいい?」と言われたときは大体このシリーズの新刊を買ってもらっている。

この本は分かりやすく魔法についての研究結果や魔法の細かい注意事項などが書いてあるので読みやすくて気に入っている。


いつか、もっと私の行動範囲が広がったら著者に会いに行こうと思う。


今日はそれともう一冊『ティアドラ王国の歴史1』というものを置いている。公爵家なだけあり、私が住んでいるティアドラ王国以外の国の歴史もあり『ウルツライト帝国の歴史』『アルテリア王国の歴史』と、私の今いる国を含めた世界五大王国と大帝国の歴史書が揃っている。きっと読書好きのお父様が集めたのだろう。


歴史書の中に転生者の記述があるかもしれないと思い、読んでみることにしたのだ。ただ、歴史書の量はかなり多く、200冊ほどあるので私が四歳になるまでかかるかもしれない。

魔法書を読むのを辞めればもっと早く終わるかもしれないが、なんて言ったって前世では存在しなかった魔法だ。せっかく魔法が使える世界に転生できたのだから読むべきだろう。


学園に入学するまでまだ時間がたっぷりあるので地道に読んでいこうと思う。

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