あっと過ぎる、鉛白色の風景:お題『標本』

 揺れの少ない新幹線は乗り心地が良く、ボックス席の通路側に座る友人二人は揃って爆睡している。窓側に座る自分は愛用の一眼レフを、向かいの友人は幼馴染みのスマホをそれぞれ見ていた。

「あ、見てみて。こんな写真を撮っていたみたい」

「えっすごっ! すっごい迫力じゃん!」

 見せてもらったスマホには、博物館で撮った大型肉食恐竜の骨格標本が写っている。角度や構図に拘ったその写真は、骨格標本なのに本物さながらの威圧感を覚えるほどの迫力がある。手軽に扱えるスマホだからこそ撮れたものだろう。

「起きたら送ってもらおっかな」

「あ、いいな。私もほしい」

 窓の外の景色が流れていく。

 もうすぐ、見慣れた景色が見えてくるだろう。

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