ぱちりと爆ぜる、炎色の風景:お題『線香花火』

 男三人、膝を突き合わせて同時に着火する。

 細い糸の下に灯された火が少しずつ膨らみ、やがて、パチパチと小さな音を立てて火花を散らし始める。ひとつでは心許なくても、三つもあればそれなりに明るい。静かに燃える花火がその光を広げ落としていく様子はまるで柳のようだ。

 誰が言い出したのか、いつの間にかに、一番長く残っていた人の勝ちだという競争になっていた。……だから。ふと浮かんだ悪戯心をそのまま口にしてみた。

「好きな人ができたんだ」

「えっ」

 直後、驚愕の声と共に二つ分の花火が落ちる。二人がこっちを見ていることはわかっても、その表情まではわからない。

「俺の勝ちだな」

 そう言ったら無情にも最後の線香花火が落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る