足早に過ぎる、暗夜色の風景:お題『短夜』

 店のドアに鍵をかける。

 店内の電気は必要最低限だけ残し、他を消してようやく一息つける。トラブルなく閉店した安堵は何度味わっても慣れそうにない。

 ゴミをまとめていたら声をかけられる。

「そう言えば今日、代わりに入ってたんだね」

「ああ。何かあいつ、急に旅行の予定を入れられたらしいですよ」

「それでよく代わってあげたね」

「今月末、隣駅の近くで夏祭りあるじゃないですか。その日のシフトを、一時間早く代わってもらうことになりました」

 明日は朝早くトップからの出勤である。閉店してから十時間後には開店なので、帰ったら早く寝なければいけないだろう。

 深いため息を吐いてゴミ捨てに向かう。

 まさに、夜は短し、といったところだ。

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