初夏に扇ぐ、陽花色の風景:お題『団扇』
暑いね、の言葉が風に扇がれている。
せわしなく動く団扇の、そこに描かれた水彩タッチな向日葵の黄色が目につく。水色をぼかした白地の背景が、より一層向日葵の鮮やかを際立たせていた。
君が毎年飽きもせずその団扇を愛用しだしたのは中学生の時だったか。何かの折に祖母から貰った団扇を、自分は使わないが高級そうな物だから勿体ないと思って渡した覚えがある。嬉しそうに団扇を使う姿を見て、お転婆な君に向日葵は似合うと思ったのはいい思い出だろう。
そんなことを考えていたら、不意に風が送られてきた。少し微温い空気の中でも、妙に力強い団扇の風は意外に涼しい。
「涼しさのお裾分け」
そう言った君は、あの頃と同じ笑顔を浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます