だらりと過ごす、暖色の風景:お題『なみなみ』

 鍋の中はほとんど具がなくなり、残された水菜が寂しげにぷかぷかと漂っている。幼馴染みでもある友人二人を招いた鍋パは正解だったと言える。

 二人のうち、食べて呑んで愚痴ってと騒いだ方の友人は悪酔いした果て、今は糸が切れたかのように爆睡している。もう一人の友人は、積み上げた缶ビールでは飽き足らず持参した日本酒を呑み始めているのだけれど顔色は一切変わらない。

 そんな二人を横目に空の食器を積み上げながら、昨晩ふと衝動に駆られて作ったクッキーを食べる。人目を気にせず自由にできるのが宅飲みの利点だ。

「この間の話、詳しく聞かせてよ」

 そう言いながら、友人のグラスに日本酒をなみなみ注ぐ。まだまだ飲み会は終わらない。

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