どきりと強張る、赤色の風景:お題『その名前』

 何をしているのだろう、と自問自答する。

 長時間見ていたスマホを放り投げると同時に深いため息が零れた。好きな人の連絡先を教えてほしい、と友人に尋ねるのがこれほど緊張するとは誰が想像ついただろうか。こんなことならあの二次会で連絡先を交換しておけばよかったと思ったところで後の祭りである。……そもそも、帰宅後で自分の気持ちに気付いたのでどのみち難しかっただろう。

 ちらりと見たカレンダーには、赤丸で囲った月末に夏祭りの文字が書いてある。

 深呼吸を一つ。ここで一歩踏み出さなければ、何も変わらない。

 友人に連絡先を教えてもらった後、好きな人に連絡することでそれ以上の勇気が必要になることを彼は、今はまだ知らない。

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