第6話 さらにエミリに……
ふうと、生徒会室でこれからの事を想像して暗澹たるため息を吐いたのち、ここにいても仕方がないと教室に向かおうとした時――
恵梨香と入れ替わるようにして、金髪イタズラ小悪魔っ娘のエミリちゃんが部屋に入ってきた。
「やっぱりいた。廊下で恵梨香ちゃんと合ったけど、物凄くハイテンションでスキップランランって感じだった」
「そうか……。恵梨香はスキップランラン……か……」
普段ならなんでもない言葉が、重くのしかかる。
これからの状況をどう打開したらよいのかわからない。
学園三大美少女で、優等生生徒会長アイドルの恵梨香との恋人関係。
恵梨香からの要望である。
小さいころから「細かいことはどーでもいいんだよ」的な思考の恵梨香は、今まで被っていたネコをあっさりと脱ぎ捨てるかもしれない。学園内の秩序の乱れは全く気にしないだろう。
俺は、男子生徒の嫉妬と憎悪の目と、女子生徒の興味深々という好奇の視線が怖いのが本音だ。
取り合えず恵梨香とは表面上恋人という関係を続けながら、全く当てになりそうにもないがクロぼうにでも相談するしかないと考えを巡らす。
恵梨香が俺を脅した状況とは言え、恵梨香を慮って彼氏彼女の関係になると言った手前、恵梨香を恋人と捉えないのには罪悪感がある。
その気がないのに断れなかったのは、状況が許さなかったとはいえ、自分の失態だ。
心弾んでいる恵梨香に申し訳ないという気持ちになってくる。
でもなあ……とさらに思考を進める。
恵梨香のやり方にも不満はあった。
都合よく『夢魔の能力』を手に入れたからといって、それを他人に使おうとする、もしくは脅しの材料にするのはなんだかなーとしか思えない。
本当に、なんだかなーという感じなのだが、その俺の思考をエミリの可愛い声が現実に戻した。
「話は変わるんだけど、エミリ、運命のパートナー的な人と結ばれる能力を手に入れたの」
「な……!」
気付くと、間近から上目遣いに悪戯っぽく俺を見上げていたエミリちゃんが、とんでもないことを口走っていた。
頭が真っ白になる。
思考が追い付かない。
「でもそれは最終手段っていうのかな」
俺の事情を全く考慮せずに、エミリちゃんがふふっとした笑みを向けてくる。
「私、前から光一郎君のこと、『いいな』って思ってたの。光一郎君、取り合えず私と恋人関係になってみない?(ニコッ)」
天使みたいな、小悪魔の微笑み。
どうすんだ、これっ!
俺、なんか、天罰が当たるような悪い事したのか!?
心中で声にするが、口から音を発することはできない。
「反対意見もないようだから、決まりね」
嬉しそうに目を細めるエミリの前で、ただただ立ちすくむ事しかできない俺なのであった。
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