第24話 二人がやってきた その2
「なかなか……諦めてくれないな。裏で画策して、恵梨香とエミリちゃんには申し訳ないと思ってはいるんだが……」
「そうね。恵梨香さんの感情をかき乱すのには成功しているけど、まだ上手い方向に出てはいないわね。エミリさんの方は、愛人関係を認めてあげれば能力を使わないで収めてくれそうだけど」
「え? 俺、エミリと愛人関係になるの? マジ?」
「あれだけ慕ってもらっているのだから、それくらいはしてあげないと申し訳ないでしょう。先に部屋の中に引っ込んだとは言え、廊下であれだけ大きな声を出していたらエミリさんには筒抜け。でもエミリさんは出てこなかった。何故だと思う?」
「何故……?」
「卯月君に私がいることや恵梨香さんとの関係が、エミリさんの利害に直接関係がないからよ。卯月君が誰か一人と運面のパートナー契約を結ばない限り。卯月君は複数の女性を関係を持つのは嫌なタイプ?」
考えたこともない事を聞かれて、うーんと頭を悩ます。
「どう……だろうな? 俺、平凡だから、彼氏彼女の関係は互いに一人同士が自然だと思ってしまうが」
「とは言いつつ、今のハーレム状態を楽しんでいるようにも見えるけど」
「楽しくない! むしろ、ストレスマッハで耐えがたい!」
「冗談よ。本気にしないで」
碧はからかって悪かったという笑みを見せた後、俺の部屋のドアノブに手をかける。
「とにかく、エミリさんの方は何とかなりそうね。卯月君がその身体を許してあげるという条件で」
「俺、エミリに身体を許さないとダメなのか?」
「エミリさんは天然タイプだけど、女の本能にも忠実なタイプだから、卯月君が身体を預けなければダメでしょうね。逆に言えば、恋人の一人としての肉体関係を築けるなら運命のパートナーにならなくても満足してくれるでしょう。卯月君は、エミリさんと『する』のは嫌? 男の人には好まれる可愛い娘さんだと思うけど」
「俺にそれを言わせるのはセクハラだろ? あと……」
「後は何?」
「お前、今までずっと猫被ってただろ? 俺に対して全く容赦がない! 恵梨香は幼馴染だから学園で優等生として振舞っているのはわかってたんだが、お前までもがと、今思ってるとこ」
「そうね」
碧は素直に同意した。
「正直、女って正直でどす黒い裏表とかない愛らしい生き物だと思ってたんだが、見くびっていた。俺ごときじゃ女に勝てない。女ってこえーって思い直している所」
「女ってこんなものよ」
可笑しいというか、むしろ俺の反応を楽しんでいるという碧の表情。
「あとさらに」
「まだあるのか?」
「お前、俺の部屋に入るの?」
「入るというか、一緒に生活するのだけど」
「マジなの? 着替えとか、どうするんだ?」
「別に卯月君に見られて減るとは思わないし。卯月君が見るに堪えないと思うのなら視線をそらせてくれればいいだけの話」
女の子が持っている恥じらいがないのに驚く。
というか、恥じらいはあるのだろうが、それが碧の優先順位の上位にない事にその碧の覚悟に正直すげーと思う。
さらに言えば、碧が自分の貞操に不安を感じている様子がない。
俺の事を信用してくれているのだろうか?
あるいは男として見られていない、はっきりわかりやすく言うとなめられているのだろうか?
碧の顔を見る。
いつもの同じような涼しげな様子。
素直に興味があって、口に出してしまっていた。
「俺と同じ部屋で怖くないのか? 俺も男という生物だから人並みの欲望的なものはある。近くにいたら我慢できなくなるという可能性も無きにしも非ず」
「そう。なら私の事を襲ってみてもいいわ。その時、私はどうするかしら? 必死に抵抗するかもしれないし、案外すんなりと受け入れるかもしれないわね」
やっぱりこの碧という女はわからない。
わからないから惹かれるという部分が確実にある。
碧とこのゲームの勝利を目指して一緒に進んでいるのだが、認めざるをえない。
俺と碧の関係を見せつけるという戦略が成功裏に収まることを祈りながら、俺と碧は一緒の部屋に入るのであった。
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