第16話 17年前 ふみ

17年前

僕の顔は母に似てきた。

僕が9歳の時、夜、父が布団に入って来た。

目をつぶって我慢していれば良かった、母の居ない家のバランスを保つのはそれしか無かった。

父は僕にキスをし、身体を弄る。

でも一線は超えなかった、父の最後の理性か。

それとも、やはり僕が男だからかも知れない、顔が似ているだけの不完全な代用品なのかもしれない。

そう思っていたが、父は僕のアナルを触るようになって来た。

僕は怖かった。


いつからか、大きなスーツケースに入る事を覚えた。

狭い空間は僕で一杯になる、誰にも侵されない空間。

この中で僕は生まれ変わる

父に穢された僕は、この中で生まれ変わる、棺なんだ。


ある日から父は僕の部屋に来なくなった。

もう興味が無くなったのだろう。

何年も男の手で触られ続けた僕の身体は、急のその手を失い戸惑っていた。

嫌悪感と快感の狭間で僕には少し亀裂が入った。

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