第19話 幸せ

私は、父が死んだ時、心の底から叫んだ。

やっと死んだって叫んだ。

父は私に澱を残した。


死が希望だった、父に初めてを奪われたとき、この男を殺したいと願った。


その澱は内臓に染み入り、私を歪めていた。

父の死体を想像する事で私は快楽を感じた。


父によって男を愛せなくなった私は、女性に愛を求めた。

でも、それは少し違っていた、女性ではなく純粋な物を愛したかった。

そして、私は文隆を溺愛した、美しい文隆を溺愛した。


化粧品や下着の位置が変わっている事から、文隆が女装している事は知っていた。

だから、わざと大人っぽいセクシーな下着や化粧品を買うようにした。


文隆を理想にしたくなっていた。

文隆を永遠に留めたかった。



「どうですか?、教育は。」


「はい、順調に進んでいます。教義がしっかりと浸透し、儀式の映像にも性器に反応があり、快楽を感じています。そして、互いの口から『ひとつになりたい』という言葉も出始めています。」


「よいですね。お2人が望まれた世界に見えているんでしょうね。」


「はい。」


「’その日’の判断は、任せます。それまで、お2人には幸せな時間をできるだけ差し上げてください。」


「畏まりました。」


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