第6話 平穏

「次の射撃ポイントは5時の方向300m先、そこから10時の方向に目標がある。」

「ターン準備、3,2,1,ターンナウ。」


機体のタイヤにかかる負荷を確認しながら端末についている機体傾斜制御用のジョイスティックを傾ける。摩擦を最大に生かしながら最小半径で旋回する。


「目標撃破!次の標的はそのまま左に旋回して正面!」


左旋回の速度に合わせてスティックを操作する。そして的がするすると機銃の射線上に現れるや否や轟音と衝撃がくる。


「最終目標撃破確認!そのまま突っ走れ!!!」



「それにしてもあんな芸当よくできたな。」

「まあに伊達に機体の設計してないからね。しかしいきなりだった。」

「故障の原因は分かったのか?次の模擬戦でもう一回起きたら今度こそ終わりだぞ。」

「確かに今回の射撃試験ではあまりいい成績を残せなかったしな。模擬戦は確実に勝ちたい。」


 二人でチームのピットの中で話し合いながら機体のチェックを行っていた。

「センサー部分の損傷はないけどそっちはどう?」

「競技中に走っていたプログラムを解析してるんだがなんとも…ん?」

プログラムの中に自分が入れた覚えのないものがあった。

「お前こいつのプログラムいじった?」

「まさか。俺はそういうの一切できないじゃん。」

「だよな。じゃあなんでこんなものがあるんだ?」


 機体に入っているプログラムの履歴からいつこれが入ったのか調べてみる。


「2071年4月20日…って大会の前日じゃないか!」

「マジ!?じゃあ機体の移送中に誰かが入れたってことなのか」

自分も内部の人間が妨害したなんて考えたくもないがその可能性が出てきてしまった。


「とりあえずその日以前の状態のバックアッププログラムがあるはずだからそっちに修正する。」

「大学で練習したときの状態なら安心だ。」


 しかしなんとも妙だ。もし本当に自分たちの競技の妨害をしたいのであればジャイロを狙わずともほかにいい選択肢があるはずだ。


 これでは致命傷にはならない。簡単に修正できるようになっているのも気になる。履歴なんか簡単に編集できるのだからわざわざ見つけやすい状態にしておく意味も分からない。



「とりあえず模擬戦の操縦は任せてくれ。」

「あぁ、そうだな。頼むよ。」


不安がいくらか残るが一応自己修復と外部からのデータの侵入を解析する機能をつけて次の模擬戦闘の会場へ足を向けた。

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