ロボットに取り込まれたあいつは本当にあいつなのか

和音器官

学生時代

第1話 腐れ縁

 自分はいわゆるSF作品に出てくるロボットが好きではない。ロマンに縛り付けられている。機械とは本来自由であるべきだ。制限の中に自由があり、ああでもないこうでもないと思考し、考えあぐねて凝固して現れたものにこそ美は訪れる、と考えている。アニメからインスピレーションをもらうこともあるため嫌っているわけではないのだが。


 朝早くの大学構内は静かだった。自分の吐いた息の音さえ聞こえそうだ。そのまま歩みを進める。今日のタスクを整理しながら無人機研に入る。研究室はいつものように高周波の甲高いノイズに満ちていた。誰かがプリンタをそのまま回し続けたらしい。表示を見ると6時間印刷と出ている。しかし出力しているのはとても製品とは言えないような無残なプラスチックの塊だった。


「ちゃんと3Dプリンタの癖覚えとけよ…」


 ミーティングルームでは明かりがついており、先客がいるようだ。


「朝早くから何してんだ?集合時間はまだ後だったはずだよな。」

「おお!やっと来たか!見よこの戦利品!」


 嬉々として一番くじの景品を並べているのは相棒の中山一機だ。


「やっぱりガンダムはいいよなぁ〜。なんてったってかっこいいもんなぁ〜」


 彼の言うガンダムも現実性に欠けると思うのだが。そんなことを前に口走ったら、

「そのために無人機研にいるんだよ」

 とさも当然と言わんばかりの顔で返された。そう彼は空想上のマシーンを現実で製作しようと言う野望があるのだ。


「そういやついさっき印刷失敗してるプリンタ見たけどあれ誰の?」

「しらーん。お前まさか俺が設計一切できないの忘れたんじゃないだろうな。」

「堂々と言うな。設計、製作は点でダメでなんでお前があんなに操縦上手いの。」

「あんなもの機械と会話したらチョチョイのチョイよ。」


 それで本当に上手いんだから面白くない。


 彼は研究所の無人機パイロットエースだ。それこそ沢山外部の競技会で優秀な成績を収めてきた。部室にある殆どのトロフィーは彼の功績と言っても過言ではない。そのため彼は非常に研究所内でちやほやされているのだがそれでも自分が一緒にいて気にならないのは彼の天性によるものなのだろう。

 自分は主に彼の使う機体の設計整備が主な仕事だ。彼は自分が作る機体が気に入っているようでチームを組んでいるのだが、無人機の設計さえ出来れば良い自分と操縦を楽しみたい彼とはウィンウィンの関係である。


「今度の大会はちゃんとやらないとなぁ」

「どんな大会でも全力で頼むよヒヤヒヤするんだから」

「君がヒヤヒヤしなくなるまで俺はやめないよん。」


 この手抜きする癖さえなくなれば素直に彼を信用できるのだが。


「少し時間余ったし演習でもするか?」

「そうくると思ってた。演習場の使用許可とレーザの使用申請はしてある。」

「最初っからその気だったってことか。じゃあ先行っててくれ。俺が機体を出そう。」

「りょうかーい。C演習場な〜。」

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