第3話 舞台

 なぜ大学生の自分達が装甲車の開発ができるのか。その理由はこの大会を見れば分かる。自分たちが出場するCUMA、無人装甲車戦闘機動競技会は日本一の規模を誇る無人機の大会だ。この大会は陸上自衛隊が主催している。


 近年の南シナ海などの国際情勢がどんどん悪化していく中で昔の体制をそのまま使っていた日本は痛い目を見た。尖閣諸島が中国に事実上占領されてしまったのだ。流石にこれは世論に大きな影響を与えたらしい。速攻で憲法改正が始まり、自衛隊が実質軍として扱われ、外国の軍隊となんら変わらない行動ができるようになった。


 離島防衛がこれからの重要な任務になる陸上自衛隊では陸上無人機の開発が急がれた。そのため多くの大学に多額の支援を送る代わりに無人機研究所を置くこととなった。これは自衛隊による大学の買収だと非難されたが、主に騒いでいたのは大学でも自衛隊でもなく世間の外野だったので放っておけばすぐに収まった。


 無人装甲車と言われればそれにしか用途がないように聞こえるが実際はマルチロール、多用途化が進んでいる。例えばモジュールを変更してアームなどを取り付ければ災害救助ロボットにもなることができる。現に災害が発生した時の救助の実績は年々増加している。大学でも災害時には救命活動のために被災地に行くことも多々あった。今思えばそこでも救助者発見数一位はうちのチームだった。瓦礫の上でも安定して活動できたのはうちの機体の脚によるものが大きい。やはり無人機はこうでないとと確信を深めた出来事でもあった。


 そんな回想に耽っていると気づけば大会当日。順調に調整は進み、コンディションは上々。だだっ広い射撃場で車検が始まる。車体の試験は無事パスして、実弾の配給を受けた後各武装のセーフティのチェックが始まる。

「君たちのチームは機関砲だけ?」

「はい。そうです。」

「なるほどね。そこの射撃場で試射して。」

響く銃声と衝撃に続いて弾着が見える。

「弾の精度良し。車検終わり。競技は1時間後ぐらいにスタートするから準備しといて」

「ありがとうございます。」


自分たちのピットに戻って機体の最終確認を始めた。

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