第5話 開始

 そんな話をしているうちに厳重注意の看板を横目に射撃場へとやってきた。係員の指示に従い競技者全員の安全を確保するためのルールの説明を受けた。だいたい想像のついていたもので、単独行動をしないこと、周りの安全に十分に留意すること、自衛官の指示には必ず従うことなどだ。何回も出場していれば分かることだがこれを忘れて重大事故を起こしてしまえば次からの大会運営に影響が出るため毎回この説明には慣れない。競技者の中に緊張が走る。


「ねっむ」


隣のバカ一名を除いて。脇腹を思いッきり肘鉄を食らわせた。

「バカ野郎一応学校の代表として出ているんだぞ。」

「痛ってぇ…。痛くて操作ミスして負けちゃうかもな~。」


注意事項や諸注意の説明が終わりそのまま競技が開始された。


 いざ射撃の競技に臨む。メカニックの俺はパイロットの後方で待機して機体の状態を端末を使用して確認しながら指示を出す。機体を直接見れるのはパイロットのいるところでしか見えないので無線で互いにコミュニケーションをとる。


「第一目標、3時の方角、200m先視認できるか。」

「タリホ―(目標視認)」

「射撃ポイント到達までロック、50メートル直進後右折して正面で射撃開始。」

「ラジャ。第二目標の誘導頼む。」


 機敏に動く機体を駆使して次々に目標に効果弾を撃ち込んでいく。しっかりと射撃と地面からの衝撃をいなしつつ速度をコントロール下に収めながら機動している。上々だ。


 縦横無人に演習場を駆け巡り指定された射撃ポイントを最短距離で縫っている様子がGPSのログから分かる。各駆動系、冷却系のパラメータを確認したところ特に目立った故障はなかった。


ところがいきなり機体のジャイロが暴れた。まるで機体が横転したような値の変化だ。


「何があった!?」

「こっちが聞きたいよ!いきなり足が出たと思ったらすぐに横転した!」


 なんでだ?なぜいきなりジャイロが狂った?おそらく足が出たというのは機体保持システムの暴走だろう。傾斜地でも保持できるように足一つひとつが独立して動けるようになっているのでおそらく平地にいながらジャイロの影響で機体を斜めに保持するため機体を傾けてしまったのだろう。


「こっちで何とかする。走行自体はできるな?」

「ジャイロを切って動かすと速度出ないし記録は狙えないぞ。」

「曲がるタイミングと曲がり具合を事前に教えてくれ。それに合わせてこっちで俺がマニュアルで傾ける。」

「おまっ本気か!?そんなことできるのかよ!」

「やるしかないだろ!次の目標は6時の方向丁度だ!」

「ラジャ!」

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