第4話 準備

「ここで申告してない武装とかつけられないのかな。」

「まず模擬戦で使えないだろ。ってかこのピットにも不正防止のため監視カメラあるの忘れたのか?」

「じょーだんですよっと。なんでも監視監視、これほんとに見てんのかね。」

「そりゃ多分ほとんどAIが監視は肩代わりしてるはずだろ。ほら、異常を検知したときだけ知らせる的な。」

「お前がこれから見るのは違反行為ではない~みたいな呪文かけたら大丈夫じゃね。」

「そんな便利な呪文なんてあるわけないだろ。」

「じゃあこの部屋のスケッチしてダミーの映像流すか。」

「それはほんとにやめろよ?マジで本当に。」


彼の描く絵はとてもうまい。写実に特に優れている。自分は絵がからっきしなのでよく外観などは彼にスケッチを描いてもらって設計している。だから意外と誤認識する可能性は捨て切れないから笑えない。


「今回警戒すべきチームはどこ?」

「事前に警戒すべきチームのことはあまり言われなかったな。しいて言うなら東工大のチームだろう。あそこはいつも完成度の高い機体を作ってくるからな。」

「同感。あそこ機体はめっちゃ強いし操縦もしやすそうなんだけど何か足りないんだよね。」

「あそこに足りないのは周りのラボからの応援じゃないかな。」

「まあ今回もこっちがミスしなければ大した心配はなさそうだな。」

大した変更箇所も無くそのまま競技時間を迎えた。


いざ競技開始の時間。大会は朝霞駐屯地と荒川河川敷で行われる。首都圏に近く、なにより50年前に行われた東京オリンピックで射撃競技の競技場となり、その後も多くの国際大会を開催してきた国内で一番競技会運営のノウハウがある陸上自衛隊駐屯地だからだ。最初に実弾射撃のテストが行われる。その後河川敷に移動して、特設の会場を用いてレーザを使用した模擬戦が行われる。


 大学の演習でも使用したレーザだが、これは反動が再現されるように光を出す発光装置と電源、発光装置では反動が生まれないためそれを生み出す反動装置を含めて現行の銃火器と同じサイズに作られている。

 作られているというのは国に認証を受けた大学には自衛隊が搭載しているものと同じ型が配給される。これらを使わないと参加できない大会とそうでない大会があり今回出るCUMAは配給品しか使用できない大会の代名詞だ。将来実用化できるかどうかも分からない新型の火器に合わせて開発するより今の火器で使える無人機の方が優れていると思っているんだろう。


「この大会の優秀なチームは自衛隊にスカウトされるって噂知ってる?」

「そんなものただの眉唾もののくだらない噂話じゃないか。」


射撃場へ機体を移動させながらいつもの噂話が始まった。彼の噂話の癖は治らないらしい。ただスカウトの噂はこの大会が始めってからずっと言われている話だ。だが俺はその話の信憑性は薄いと考えている。もし優秀な人材がいたとして自衛隊の人がなんでわざわざ直接スカウトするのかが分からない。だったら開発の企業に入れて開発させればいいじゃないか。

「噂話は大概にして会場に向かおう。」

「今回も勝たせてもらいますよーっと。」

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