第17話 最終戦開幕

「なんでお前がこんなところに…。」

「おっ!ついに来たか!待ってたんだぞ。」


こいつ今なんて言った?待っていた?何を?俺を?


「待っていたっていったいどういうことだよ。」


「自衛隊と民間の開発の共同を提案したのはほかでもないこの俺だ。民間でも無人機を研究できる環境を整えておけばお前は手段こそ違えど何らかの形で参加すると思っていたからな。」


 俺のためだけとは思わないが俺が来るのを見越してこの仕組みを作っていたというのか。あまりにも用意周到すぎる。だいたい


「俺を無人機の開発に戻してなにが目的だ?」

「それはお前が考えていた最強の機体を見て欲しかったからさ。」


俺が考えていた最強の無人装甲車。少し考えてみて思い出した。


「お前まさか…CIBSを完成させたのか?」

「ご明察!やっぱ勘のいい奴と会話するのは面白いね。」


自分が大学のころ、構想だけ完成していたあるシステム。それは生体完全統合システム。略してCIBSだ。ブレイン・マシーン・インターフェースの一種で、脳の波形を直接機体に反映させて人の手による操縦ではできないような複雑な機動を実現する夢の技術。


「ヘッドギアを使うのか?」

「それだとどうしても遅延が生じちゃうんだな。だから今回はあの機械の中で操縦する。」


機体が収まっていたトラックの奥からもう一つ大きな機材が持ち出される途中だった。見た目はなんとなく棺桶を連想させた。


「最後に戦おう。楽しみは最後にとっておく主義なんだ。」


「なにあの人?知り合いなの?」

「ああそうだよ。大学時代にバディを組んでた。」

マリが心配そうにこちらをみつめてきた。大丈夫さ。俺のいやな予感ってのはよく外れるんだ。


「みんな集まってくれ。相手から対戦の順番が出された。」

「相手方から対戦順を指定するなんて珍しいな。」

「相手は一対一の模擬戦をご所望だ。何しろ機体単体の戦闘能力を把握したいそうだ。」


自分たちのチームは宣言通り最後に回されていた。先に試合を見て十分に戦略を練ったうえで戦えという意味なのだろう。


 最初の対戦が始まろうとしていた。黒ずくめの機体の後ろにはあの棺桶が横たわっていてそれに今まさに一機が乗ろうとしていた。


「何をするつもりなんだ。」


 心のどこかに違和感を持ったまま模擬戦がスタートした。

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