第16話 再会
試験が終わった後、彼女たっての希望でその機体は赤く塗られた。昔のアニメの悪役を思い出したが、性格的にはあのヒロインだろうか。まあ、気に入ってくれたようで良かった。
それからの日々は毎週のように模擬戦と修正を繰り返していた。フィールドではチームという制度もあり、それを利用してチームを結成した。チームの名前は「identity tech」
チームの存在意義はとがった機体で技術の先端を追及するという意味がある。
「今回もうまくいったな!」
「この機体何度操縦しても飽きないわ。本当に最高よ。」
「マリ!最近いい調子じゃないか!今年はあの大会に出てもよさそうだな。」
「どうもこんにちはオーナー。すみませんあの大会って何でしょう?公式大会でもあるんですか?」
「いや違うよ。第一日本国内で営業が黙認されているのはうちだけだからね。」
「じゃあどこの機体と戦うっていうんです?」
「それはだな———
そして二週間後。ついにオーナーの言う「あの大会」が始まった。
「あの、本当にそんな人たちが来るんですか?」
「ああ、本当さ。毎年この時期になったら必ず来るんだよ。」
そうこう話しているうちに大きな黒塗りもトラックがフィールドに入ってきた。そのあとに続いてミニバスが来て、人が降りてきた。
「いつもお世話になっております!」
いつもからだと想像できないオーナーの態度に初めて見た自分は戸惑ってしまう。
「いいんだよ。我々としてもこのような場所がまだあるのはとても助かっている。これからもこの関係を続けていこうではないか。」
背広を来たなんとも偉そうな人がオーナーを見下ろしながら話していた。
「それでは所長はこちらにおかけになってください。準備をしていきます。」
「よろしく頼む。おいお前ら支度を実験の準備だ。」
「ラジャー!!」
つなぎ姿の作業員たちが素早く動き、トラックの中からほろに覆われた何かを下した。
「これが…本物の最新鋭無人機…。」
そもそもこのフィールドが存在できている理由、そしてあの背広を来た人がオーナーに対して横柄だった理由。
それは毎年ここで自衛隊の開発中の機体を試験させることだ。
というのも無人機の民間でも開発は禁止されたわけだが、民間の参入なくして持続的な開発はできないという考えが自衛隊内に最近広まったという。一人の若い技術要員だった男がこれを唱え続け、最近になってこれが全体として認められることになった。そして取り締まるか悩んでいたフィールドに交渉を持ち掛け見事成立した。
そして今日がその試験のための模擬戦が開かれる日だった。
「今日もどんな奴が相手だろうとぶっ飛ばしてやるわ。」
彼女のやる気も十分だ。自分も自分の機体に自信を持っているので彼女と同じ気持ちでいる。
ほろが外れて自衛隊の機体が明らかになった。
「普通の装甲車じゃないか。」
晃かな落胆の声が聞こえた。それもそのはず、自分から見ても何ら珍しいところのないありきたりな機体だったのだ。なんだ期待外れじゃないか。
一応ぐるっと回って全体を把握しようと歩いていた時、作業員の中で一人全く作業をしない人がいた。怪訝に思っていると相手と目が合った。
いきなり向こうからそいつが走ってきた。なんだなんだ怖い怖い。逃げようかと頭によぎった瞬間
「セイ!誓じゃないか!どうしたんだお前!」
「おまっ…一機か!」
なんと学生時代の相棒、中山一機だった!
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