第8話 異変
決勝トーナメントが始まった。とは言っても今まで何回も参加している大会なのでいつも通りの結果を出すだけだ。
そしてとんとん拍子で優勝してしまった。あまりにもあっさり優勝してしまったので特に思い出すことがない。一番心配だったのはあのジャイロセンサーの不具合が再発することだったので敵のことなんか気にしていられなかった。エンジニアの仕事は試合をするのではなく自分たちの機体を万全に保つことなのだ。
そして表彰式。優勝したチームには旗と自衛隊の演習場で試験走行する優先権を得ることができる。優勝旗を受け取り写真撮影を終えて自分たちの機体をピットで帰り支度のために準備を始めた。
「今回も優勝したな。機体の調子はどうだった?」
「全く問題なし。さっきの不具合が不思議なぐらいだよ。」
大会には無事に優勝できたので良かったものの疑問の残る大会だった。未だになぜセンサーが狂ったのか分からないのだ。
「ここが優勝したチームのピットかね」
いきなり大柄な男がピットの中に入ってきた。
「すみませんここは関係者以外立ち入り禁止で危険物も多いので危険です。なんの用でしょうか。」
「私は陸上自衛隊先進無人機研究所主任、近田だ。むろんここに入る許可も君たちと話すことは上が知っている。」
「それは大変失礼しました。しかしそのような方がなぜうちのピットにいらっしゃるのでしょうか。」
パイロットの一機も少し緊張しているようだ。身が固まっている。
「そうだな単刀直入に言うと私たちのもとで研究してみないかという誘いだ。」
「つまりそれはスカウトという意味でとっていいのでしょうか。」
「そういうことだ。」
なんということか。無人機の最新研究を行っているところからスカウトを受けてしまった。
「なぜ私たちなのでしょうか。」
「もともと目はつけていたのだか今回の予選の対応を見て決断するにいたったのだ。」
「なぜ予選なのでしょうか。決勝では優勝できましたが予選では順位はあまり振るわなかったのですが。」
「それはあの不具合は私たちが仕込んでおいた仕掛けなのだよ。パイロットの技量は走りを見れば分かるがメカニックの違いはとっさの機転にある。なので君の対応力を見させてもらった。」
陸上自衛隊ならば確かに試験前の機体に触れることができる。単純なことだったわけだ。
「君たち両方に十分な実力があると判断してからのスカウトだ。十分に能力を活かすことができると考えたわけだ。自衛隊で国防の名のもとに無人機を研究してみないか?」
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