第14話 感謝
半分そんな気はしていたが、彼女の操る機体は自分が操縦したそれの動きをはるかに上回った。自分が本当にしたい動きを目の前でしていた。私の理想そのものだった。
「なんだあの機体…。」
「あれを相手するのはきつそうだな。」
気が付いたらギャラリーができていた。みなあの機体に目を奪われている。ちょっと誇らしいような、悔しいような。
何戦かしたが一切歯が立たなかった。次の動きが読めない。開発した自分でさえ読めないのであれば相当強力な機体になるはずだ。
「あんた、私の言いたいことが分かったかしら。」
「なんとなくわかった。自分の機体に操縦者の反応速度が追いついていないってことかな。」
「正解。こればっかりは才能が大きいわね。残念でした。」
なんともバカにされたような言葉だが言い返せないのが悔しい。
「才能か…。自分の才能のなさを恨むよ。」
「そうね、あなたは機体操縦の才能なさすぎ。」
「ちょっとマリ!そんな言い方はなんだ!ごめんなさいね高橋さん。」
「いいんですよオーナー。その子の言っていることは正しい。」
「でもね、高橋さん。こいつあなたがいないときにレンタルガレージに勝手に入って機体眺めてるんですよ。」
「ちょっとパパ!!言っちゃダメでしょ!」
「なんでもえらくあなたの作る機体が気に入っているらしくて。曰く『芸術作品』だそうで。」
「パパああああああ!!」
どんな顔をしたらいいのか分からなかった。自分の機体のファンなんて今までいたことがあっただろうか。大学時代や今でも動いている機体は注目されたことはあった。それこそ技術を盗もうと必死になる人たちはたくさんいた。
しかし自分が本当に気にしていたのは美しさだった。機体を見た時に人がきれいと言ってくれるような機体になるように今まで設計してきた。
「自分が作った機体、そんなに気に入ってもらえてるとはね…。」
「いい、あなたは確かに機体の操縦の才能はテンでダメ。だけど、設計の腕だけはほめてもいいレベルよ。」
「だってお前、今日機体を操縦できるってウキウキだったもんな。」
「だからパパ!!」
なんだ最初から全部仕込まれてたんだ。
「私が元気なくしてるからですか、オーナー。」
「いや。正直俺は客の感情に寄り添うほどやさしくはないんだ。娘が全部計画したんだ。」
そんなに元気がないように見えたか。まだまだ頑張らないとな。
「よし分かった!マリちゃん君に機体を一つ新造しよう。」
「ホント!やった!!」
元気を出させてくれたお返しだ。それぐらいやって当然だろう。
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